神殺しのクロノスタシス2

もう、一時間目の授業が始まる前で既に、突っ込みどころ満載過ぎて。

お腹一杯なのだが。

「れ、令月君大丈夫なのかな…」

「全くだよ…」

と、学院長室で水晶玉を覗きながら、二人で喋っていると。

そこで、シルナオオカマキリに、危機が訪れた。

「…ん?うわっ、カマキリだ」

学生寮から校舎に向かう令月を、追いかけていると。

生徒の一人が、シルナオオカマキリに気づいた。

あ、やべ。

しかも、見つけたのは女子生徒。

「きゃーっ、やだ、気持ち悪い!」

「嘘っ、こんな季節にカマキリ!?」

カマキリを気持ち悪がるお年頃、それは分かる。

女子生徒達は、シルナオオカマキリを気持ち悪がって、遠巻きに見て怯えていた。

「そ、そんな…。中身は私だよ。怖くないよ、怖くないんだよ~…」

カマキリ越しに、生徒達に気味悪がられているとショックを受けたらしいシルナ。

だから、カマキリなんかにするから。

いくらお前がそこで怖くない怖くない言ったって、向こうの生徒達には通じないから。

ただのカマキリだから。

時期外れのオオカマキリが、ちょっとした騒ぎに発展。

すると。

「何事です、大声を出してはしたない。もうすぐ授業ですよ」

元ラミッドフルスの鬼教官、イレースが現れた。

「イレース先生~…」

「何ですか」

「そこに…カマキリが…」

「カマキリ?」

女子生徒の一人が指差す先に、

シルナオオカマキリ。

「あっ、イレースちゃん!イレースちゃん私だよ!シルナだよ!」

シルナオオカマキリは、必死に自分の健全さをアピールしようと。

両手の鎌を上げ、シャーッと威嚇。

女子生徒達は、安心するどころか、悲鳴をあげる始末。

そりゃそうだ。

「全く、イーニシュフェルトの生徒ともあろう者が、カマキリごときに情けない…」

イレースは憤然とそう言い、シルナオオカマキリに近づいた。

「あ、イレースちゃん、私。それ私の分身だよ!シルナオオカマキリだよ!」

だから、お前が今ここで何を言ってたって、向こうには何も通じてないから。

カマキリが威嚇してるだけだから。

ますます怯える生徒達に、イレースは溜め息をつき。

そして。

「全く、時期外れのカマキリが、何処から現れたのか知りませんが」

イレースの目に、殺意が宿った。

「生徒の風紀を乱す者は、何者であろうとも容赦はしません」

「え?嘘私カマキリだよ?シルナオオカマキ、」

イレースはシルナオオカマキリを、ガシッ、と掴んだかと思うと。

ブンッ、と大きく振りかぶって、空の彼方にぶん投げた。

水晶玉に、何処までも綺麗な青い空が映った。

あーあ…。

「いやぁぁぁぁぁっ!!シルナオオカマキリがぁぁぁ!!」

シルナが学院長室で、涙目で叫んでいるとも知らず。

イレースは、害虫を駆除したと言わんばかりに。

「さぁ、これで大丈夫でしょう。皆さん、各自教室に急ぐように。もう授業が始まりますよ」

「は、はいイレース先生」

「ありがとうございます…」

生徒達は、ホッとしたように校舎に駆けてゆき。

イレースは、何事もなかったかのようにその場を去り。

「…酷い…。なんて酷いことを…」

「…」

シルナは、半泣きで自分の分身を憐れんでいた。