神殺しのクロノスタシス2

で、そうこうしているうちに、午前七時がやって来た。

朝食時間を告げるチャイムが鳴った瞬間。

令月はカッ、と目を開き。

学生鞄を掴んで、勢いよく扉を開け。

食堂のある一階に向けて駆け降りていった。

如何せんこちらはオオカマキリなので、ついていくのが大変だ。

慌ててシルナカマキリが令月を追いかけ、食堂に辿り着いたときには。

「食事準備良し!」

きっかりと、今すぐ食事が出来る体勢に入っていた。

早い。

あ、ちなみにイーニシュフェルト魔導学院に来ている生徒は、魔力の量が一定水準を越えているので、積極的に食事をする必要はない。

食事を摂取しなくても、特に問題はないのだが。

一応、身体作りには大切な時期だから、食事はちゃんとしておくように、と。

ルーデュニア聖王国、全国の全寮制魔導学院では、一日三度食事の時間を設けること、と魔導教育法で決められている。

教員については、特に決められていないので、食べたきゃ食べれば良いが、食べなきゃ食べなくても良い。

イレースは、時間が勿体ないから必要ありません、と素っ気ないし。

ナジュも、生徒に付き合ってふらっと食堂に来たり、来なかったり。

俺も、似たようなもんだ。

シルナは、生徒と一緒にご飯食べたいから、と割と頻繁に食堂に通ってるけどな。

今日はカマキリなので、食事はお預けだ。

そして、これも雑学的な要素なのだが。

イーニシュフェルト魔導学院学生寮の朝食。

朝はパンを食べるか、それともご飯に味噌汁か、永遠のテーマだと思うが。

いや朝はパンだろ、いやふざけるなご飯一択、と洋食派VS和食派が、食堂で仁義なき戦いを繰り広げることがないよう。

朝食だけは、洋食派の朝食、和食派の朝食の二種類が用意されている。

それぞれ、好きな方を選択して食べて良いよ方式である。

贅沢だと思ったろ?

俺もそう思う。

イレースもそう言うんだけど、「駄目。朝食にどっちを食べるかは、それぞれの家庭方針によって違うんだ!」とかいう、シルナの謎理論により。

この方式が取られている。

別に、こんな面倒臭いことしなくても。

今日がパンなら明日はご飯、明後日はパンで明明後日はご飯、って交互にすれば良いじゃんって思うのだが。

シルナには、何か譲れないこだわりがあるらしい。

まぁ、あれだ。

洋食派の生徒が、「あー今日は和食の日か…」と、朝からちょっとブルーになるのが可哀想なのだ。

それだけの理由である。

と、前置きが長くなったが。

令月は和食派であるようで、和食のメニューを選択していた。

これは想定済み。

何せ、甚平着て寝てたくらいだからな。

これでパンにバター塗って、優雅に紅茶とか飲んでたら、むしろこっちがギャップに苦しむところだった。

そして食べ始めた令月の、その素早い箸使いよ。

そんな早食いしなくても、ご飯は逃げないから、と言ってあげたくなるような早食い。

しかも、箸の使い方がお手本みたいに綺麗。

魚なんて、骨だけ綺麗に残されて、文字通り身ぐるみ剥がされたみたいになってる。

お茶碗も、米粒一つ残っていない。

食器洗った?ってくらい綺麗。

そして速い。

「あ、令月君。今日も食べるの早いね」

食堂で会った同級生の一人が、令月に声をかけた。

そりゃそう言いたくもなる。

「大丈夫。咀嚼回数はちゃんと一口30回を守ってるから」

数えてるのが凄い。

誰よりも早く食堂にやって来て、誰よりも早く食事を終え。

誰よりも早く、令月は食堂を出た。

すると。

「あ、もしかして君が黒月君?」

「?」

食堂の入り口で、丁度食堂に入ろうとしていた生徒が、令月に声をかけた。