神殺しのクロノスタシス2

起床時間前に起きた令月は、ゴザの上に座っていた。

そこまではまぁ良い。

で、座って何してるのかというと。

「…」

美しい姿勢で座禅を組み、瞑想していた。

あいつは朝から、何の修行をしてるんだろう。

日課?日課なのか?

ルームメイトがぎょっとしてない辺り、多分日課なんだろう。

すると。

時計の針が午前六時半を差し、起床時間を告げる柔らかいクラシック音楽が、学生寮内に鳴り響いた。

「うーん…」

その音に、令月のルームメイトはベッドの中でもぞもぞとして、伸びをしたりなんかしていたが。

令月はと言うと。

起床時間が来たと同時に、カッ、と目を開き。

一瞬で座禅の姿勢を解いたかと思うと、床に敷いていたゴザを、寸分の隙間もなくまるめ、壁に立て掛け。

着ていた甚平(←冷静に考えればこれもおかしい)を、一瞬で脱いだかと思うと。

何処の曲芸師かと思うほどの早着替えで、イーニシュフェルト魔導学院の制服に着替え。

甚平を綺麗に折り畳んで、ゴザの横に置き。

髪を束ね、机の上に置いていた学生鞄を掴み。

「黒月令月、起床準備良し!」

と、叫んだ。

ここまで、所要時間およそ一分未満。

…お前は、何処の軍隊から来たんだ?

ちなみにその間、ルームメイトはようやくベッドの上に起き上がり、ごしごしと目を擦っていた。

「…うーん…。令月君、今日も早起きだね…おはよう…」

「うん、おはよう」

ルームメイトも、もう慣れてるようだ。

挨拶はちゃんとしてるようで何より。

なんだか、令月だけ住んでる世界が違うようだ。