神殺しのクロノスタシス2

翌日。

俺達は朝っぱらから、学院長室で、二人で水晶玉を見つめていた。

変な絵面だと、自分でも思う。

しかし、これも令月に健全な学生生活を送らせる為…。

…なのか?

本当に?

今からでも良いから、やっぱりやめようかな…。

と、思っていたのに。

「よし、じゃあシルナオオカマキリを、学生寮に潜入させるよ」

「…あ、そう…」

今更やめる、とは言えなかった。

シルナは、手乗りサイズのオオカマキリ…ぶっちゃけキモい…を、ひょいっ、と外に放った。

カマキリになんてことを、と思われたかもしれないが。

何を隠そう、あのカマキリ。

シルナの分身である。

シルナが、学院内で自分の分身教師に授業を行わせているのは、教師陣の中では周知の事実。

だが。

この男、分身魔法にかけては、変態的に突出している。

人間のみに限らず。

他の生物…そう、昆虫だろうが哺乳類だろうが爬虫類だろうが、何にでも姿を変えられる。

この時点でかなりキモい。

その癖、動物園ではヘビにびびってたからな。

意味分からん。

で、今回シルナはオオカマキリの分身を作り。

その分身に特殊な「目」をつけて、水晶玉を通して俺達が観察出来るようにして、学生寮に放った。

目的は一つ。

普段、令月がどんな学生生活を送っているのか、見守る為である。

学習面では、授業中や放課後を通して、いくらでも見ることは出来るが。

学生寮の中や、授業の合間の休憩時間にどんな様子なのかは、さすがに見れないからな。

そこで、カマキリ分身を使って見守りたい、とのこと。

一つ聞かせてもらって良いだろうか。

何故カマキリ?

同じ役目を果たすなら、別の生き物でも良いのでは?

カマキリってお前、あれ活動するの夏では?

時期的におかしい。

「何でカマキリなんだよ」

聞いてみた。

「え?」

「他の生き物でも良いだろ」

「だって…蝿や蚊だと、パチンって叩かれそうだし…」

確かに。

「猫や犬だと大き過ぎるし…」

まぁな。

保護されてしまう。

「微生物くらい小さくしちゃうと、『目』をつけるのが大変だし…」

顕微鏡で見なきゃいけなくなるもんな。

「かといって、蝶々やトンボだと、ひらひらして目立つから、教室から追い出されそうじゃない?」

成程。

その点カマキリなら、壁にくっついてるだけで良いから、楽に観察出来ると。

一応、シルナなりの理由があるんだな。

まぁ、それでも別の生き物でも良いじゃんと思うけど。

だって、カマキリってキモくね?

俺の偏見?カマキリ好きな人ごめん。

でもキモいわ。

それがしかも、シルナの分身だと思うと、もうおぞましいレベルでキモい。

「羽久が…シルナオオカマキリに失礼なことを考えてる気がする…」

「考えるに決まってるだろ。俺は昆虫は嫌いなんだよ」

「なんて酷いことを!昆虫だって生きてるんだよ?」

「あ、おい動き始めたぞ」

「こらっ、話聞きなさい」

うるせぇ。