神殺しのクロノスタシス2

「私は元気だよ」

負傷者はいないかという問いに、何故か真っ先に答えるベリクリーデ。

「大丈夫だ。誰もお前の心配はしてない」

「そうなの?」

「むしろお前の敵に回った刺客の方を、俺は心配してるよ」

良いことを言うな、ジュリス。

星になってるだろうからな。

「怪我してるのは令月だ。指、治してやってくれるか。天音」

「あっ…。本当だ、折れてる」

自分で折ったんだぞ、これ。信じられるか?

「大丈夫、すぐ治すから」

天音は、令月の指に杖を向けた。

みるみるうちに、腫れ上がっていた令月の指がもとの色を取り戻した。

よし。

「はい、これで大丈夫。他に痛いところはない?」

「…ない…」

「そっか。良かった」

天音に笑顔を向けられ、何と言ったら良いのかと戸惑う令月。

笑顔を向けられて戸惑うな。

それと。

「私が治してあげたかった…」

残念そうに言うな、シルナ。

天音にも華を持たせてやれ。ずっと待機してたんだぞ。

自分も動き出したくてウズウズしてただろうに。

すると、キュレムが。

「はーい!ルイーシュ君に窓から突き落とされて、打撲と窓ガラスの負担代で懐が痛いです!治してください天音先生」

「えっと…。前者は治してあげられるけど、後者はちょっと…」

金払うのは嫌なのか。

俺もだ。

「慈悲!何処かに慈悲はないのか!」

「キュレムさん。慈悲はないのでここは自費で」

「ちょっと上手いこと言ってんじゃねぇよ!」

なんて、微笑ましいやり取りに。

「…」

いつの間にか、令月の涙が止まっていた。

あとは、これで一緒に笑えるようになったら合格だな。

まぁ、泣き止んだから及第点としてやろう。