神殺しのクロノスタシス2

…とりあえず。

屋上の安全は確認された。

次は校舎だ。

間違いなく、僕を探して校舎内に刺客が侵入しているは、

ず、と思ったときには既に遅かった。

「っ…」

不味い、と思った。

僕は咄嗟に物陰に隠れ、息を潜めた。

既に、刺客と遭遇していた。

校舎を守っていた、彼女が。

「…今日は、来客の予定はないはずですが」

イレース・クローリア、その人である。

「学院に用があるなら、事前にアポイントを取ってもらわなければ困ります」

「…」

『アメノミコト』の暗殺者は、何も答えない。

当然だ。敵に情報は与えない。

暗殺者の基本だ。

どうしよう。

僕は考えた。

イレースさんの実力は、授業を通してしか知らない。

しかも彼女の授業を受けるときは、大抵座学だった。

だから、彼女がどれほどの実力を持っているのか、分からない。

今なら、まだ暗殺者は僕の存在に気づいていない。

加勢するか?それとも、このまま静止して…。

いや、こうして考えている時間が惜しい。

次の瞬間には、『アメノミコト』の暗殺者が、イレースさんの首を刈っているのかもしれないのだ。

だったら、気づかれる前にこちから…!

殺気を飛ばし、刀を構えようとした、そのとき。

「…大体、近頃私は怒ってるんですよ」

…ん?

「春先から、何処ぞの読心魔法生徒が潜入して、事件を起こし。そのせいで、私が春休みの間に綿密に立てた、一年の授業計画が台無しになり…」

…え?

「挙げ句に、うちの能天気な学院長が、その読心魔法生徒を教師にするとか言い出し、そのお陰でまた授業計画が狂い…」

…は?

「その読心魔法教師が、無駄に容姿端麗なせいで、主に女子生徒の風紀が乱れていることに、私は危機感を感じているというのに…」

…あ?

「あの学院長と来たら、能天気にイルミネーションだのクリスマスだの…。昨日届いた、先月の電気代の請求書を見せてあげましょうか?全くあの馬鹿みたいな装飾のせいで、先々月の請求額の三倍ですよ、三倍!何処から補填するんですか!」

「…」

何故か、出会い頭に怒鳴られ。

暗殺者の方も、ちょっと困った様子だった。

いや、そんなこと自分に言われても…と思っていたに違いない。