これには、対戦相手も驚いたようで。
しばしの躊躇いを見せた。
あ、今だ。
今お前、油断した。
何でこいつ、まだ立ち上がるんだろうとか。
何の技を出そうか、とか。
そんな下らないこと、考えてるから背後を取られるんだよ。
僕はナイフで、敵の背中を刺し。
そのまま腰にかけて、思いっきり切り裂いた。
生肉を、刃こぼれの包丁で切るのと同じ。
その肉が、今日はたまたま人間だったっていうだけの話。
絶叫が聞こえた。うるさかった。
僕のものじゃない。対戦相手の咆哮だ。
お前魔導師だろ。すぐ回復するんだろ。
だったら、ギャーギャー喚くなよ。
でも、これも隙だから。
あまりの痛みに、むやみやたらに攻撃を繰り出す対戦相手。
僕には、全部止まって見えた。
遅い。遅いよそれ。
僕は、あっという間にナイフの攻撃範囲に入り。
今度は、敵の心臓部を狙って、ナイフが埋没するほど強く、強く刺し込んだ。
不思議な力が宿ったナイフは、びっくりするほど切れ味が良くて。
あんまり強く押し込み過ぎたせいで、ナイフの切っ先が、敵の背中を突き破っていた。
返り血が顔にかかって、不快だった。
とりあえず、ナイフを抜こうとしたのだけど。
何せナイフの柄は血塗れでぬるぬるしてるし、骨や内臓に邪魔されて、なかなか抜けなかった。
「…もう良し」
「…は?」
試験監督が、僕を制した。
あぁ、そうだった。
僕、今、「選別試験」してたんだった。
忘れてた。
僕は生きてて、目の前ではさっきまで戦ってた相手が、目を開いて絶命している。
と言うことは、僕は勝ったんだ。
そのとき初めて、僕は自分の中にあるものを知ったのだ。


