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第三部3章 (17/39)
「あー長かった合宿。僕もう教師辞めようかな…」
「落ち着け。大丈夫だ、お前が全く教師に向いてないことは、皆分かってる」
それでもお前は、イーニシュフェルト魔導学院の立派な教師だ。
「しかも、帰ってきたら冬休みで生徒がいな…あ?」
あ?
ナジュは、不思議な顔をして、令月を見つめた。
「…」
何故、無言で見つめる。
しばし、無言で見つめ合う二人。
ナジュの方は興味津々で、令月はちょっと引き気味だった。
当たり前だ。
令月は子供なんだぞ。
そんな威圧してやるな。可哀想に。
「…何で生徒がいるんですか?冬休みなのに」
「あー、なんかシルナが気に入っちゃっててさ。うちの特待生として、学院に迎え入れたんだよ。帰る実家がないから、学生寮にいる」
「…ふーん…」
ふーんってお前。
そんな興味なさそうに。
いたいけな新入生だぞ。もっと気を遣ってやってくれ。
「まぁ、僕は関係ないんで。あー合宿のレポート出せとか、マジ面倒くさっ。ルーデュニアの教育委員会なんて、消えてなくなれば良いのに…」
ナジュは、とんでもないことを言いながら、よたよたと校舎に入っていった。
合宿お疲れ。
「大人ばっかりでつまらないかもしれないが、まぁ、自分の思うように過ごしてくれよ、令月」
「…うん、分かった」
本来なら、家族とこたつに入って、みかんでも食べて談笑してる年頃なのにな。
それすら、令月には許されないのだ。
そう思うと、令月の身の上が気の毒でならない。
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