「楽しそうだね、ナジュ君」

「…楽しそう?」

膝枕って、皆さんご存知だろうか。

僕は僕の精神世界で、リリスに膝枕してもらいながら、二人でお喋りしていた。

何だか酷く、滑稽な絵面に見えるかもしれないけど。

僕にとってはこんな時間が、堪らなく幸せだと感じるのだ。

そしてリリスは僕の頭を手のひらで撫でながら、そう言った。

「あんなに楽しそうなナジュ君を見るのは、いつ以来かな」

…リリスと一緒にいられたとき以来かな。僕の記憶が正しければ。

その後僕は段々、狂っていってしまったから。

「…楽しそう…楽しそうですか?僕」

「楽しそうだよ、凄く」

…楽しそう、なのか。

それも、凄く。

リリスがそう感じるほどに。

「私、ここでナジュ君のことずっと見てるもん。昔からずーっと」

「ストーカーみたいですね…」

「ナジュ君と同じものを見て、同じものを聞いて、同じ時間をずっと一緒に過ごしてたのだ」

「本当にストーカーですね…」

「でしょ?」

でしょ?ってそんな、得意気に言われても。

でも確かに、リリスは僕と感覚を共有してるから。

リリスが、僕が楽しそうにしてると思うのなら。

確かに、僕は楽しそうなのかもしれない。

「自分では、あんまり自覚ないんですけどね」

教師なんて、初めてやったけど。

何だか(主に羽久さんによる)駄目だしが多いし。

思ったこと口に出しただけなのに。

それが僕の悪い癖って奴なのか?

だって。

僕が何か言葉を口にして、それに答えてくれる人って、今まであんまりいなかったんだもん。

反応してくれるのが嬉しくて、つい。

「僕、寂しがり屋の構ってちゃんなので。構ってくれる人がいたら、構って欲しくなっちゃうんです」

「だよねぇ。ナジュ君昔から、そういうところあるよね」

リリスに出会う前から、僕は寂しがり屋だったからな。

根っこの部分が、全然成長していない。

生まれたときから、寂しがり屋の構ってちゃんです。はい。

傍迷惑な性格でごめんなさい。

むしろ、生きててごめんなさい。

「だけど、今は楽しそうだよ」

「…どんなときに?」

「いつも。イーニシュフェルト魔導学院に来てからずっと」

そうか?

…そうか?