神殺しのクロノスタシス2

本音を言えば。

今すぐ、ここから逃げ去りたい。

しかし、そうも行かない。

「な…なっ…」

イレースの容赦ない舌鋒に、ユーマ母は絶句。

今までこの人は、自分の息子に絶対的な信頼を持っていたのだろう。

うちの子なら大丈夫。

うちの子なら出来る。

実際、今まで手元に渡ってきた彼の成績表は、どれも彼が優秀であることを示していた。

それが、この母親を支えている、柱みたいなものだった。

その柱が今、ここイーニシュフェルト魔導学院にて、木端微塵に砕かれようとしている。

つまるところ。

ユーマの成績は、母親が思ってるほど高くはない。

と言うか。

その程度では、イーニシュフェルトで上位の成績を維持するのは困難だ、ということである。

…まぁ、これも新入生あるあるの一つなんだけどな。

今まで優秀だなんだと褒められて、天狗になって入ってきて。

周りも自分と同じくらい優秀なんだと、気づいたときには既に周りと差が開いている。

自惚れのあまり、周囲が見えていないのだ。

自分が優秀だと褒めそやされ、努力しているように。

周りの皆もまた、優秀だと認められ、努力しているから、ここにいられるのだ。

何も、ユーマ一人に限った話ではない。

毎年いるのだ。こういう生徒は。

今まで自分が一番だったが為に、無意識のうちに自惚れてしまう生徒。

そういう生徒は、今まで通りの勉強で上手く行くと誤解する。

そして、今まで通りでは通用しないことに気づく。

だって、自分の周りにいるのもまた、他ならぬ自分と同じく、優秀な生徒なのだから。