神殺しのクロノスタシス2

ともかく。

学費云々は置いといて。

「ま、まぁお母さん。落ち着いてくださいよ。大丈夫ですよ、まだ一年生なんですから」

シルナ、懐柔策に出る。

生徒が一年生であることを利用した、高等テクニックである。

「まだ学校に通い始めて、半年と少したったばかりじゃないですか。もっと長い目で見て…」

「そう思ったから、一学期は我慢してたんです」

憮然として、ユーマ母は言った。

…一学期?

そういやそうだ。一学期の成績表も、親元に送付されてるはず。

この成績表を見るに、一学期のときも、成績はあまり奮わなかった様子。

そのときは、ユーマ母も殴り込みには来なかったよな?

「王都に行くのも初めてだし、まだ慣れないんだろうと思って、黙ってたんです」

「は、はい…」

「でも!」

「ひぇっ」

ユーマ母は、バン、と机を叩いた。

やめてくれ。シルナのちっぽけな心臓が縮み上がっている。

元来びびりなんだよシルナは。容赦してやってくれ。

「二学期は別でしょ!もう学校にはとっくに慣れたはずでしょ!なのに何なのよ、この体たらくは!」

何なのよと言われても…。

「それ、自分の息子に言えば良いのに…」

おいナジュ。また聞こえるか聞こえないかくらいの声で、ぼそっと呟くのやめろ。

聞こえたらどうするんだよ。

怒りのあまり、聞こえてないみたいだから良いけどさ。

「そ、そんな。お母さん、ユーマ君はまだ13歳なんですよ?親元から離れて、新しい環境に適応するのに、そりゃ早く適応する子もいますけど、慣れるのに時間がかかる子だって…」

と、しどろもどろ、反論するシルナだったが。

「よその子がどうなのかは知りませんが、うちの子は違います」

一蹴された。

出たよ。モンペあるあるその2。

うちの子はよその子とは違うという、根拠のない謎の自信。

何処から出てくるんだ、その溢れ出る自信は…。

「良いですか、うちの子は優秀なんです」

そりゃどうも結構なことで。

「それに、親元から離れるのも、今回が初めてじゃありません」

え、そうなの?

「うちの子が通ってた小学校は、魔導科のある小学校でしたから。そこの優秀生徒に選ばれて、二週間ほどの合宿や、三か月にも及ぶ魔導セミナーにも参加したことがあるんです」

成程、ユーマ母がこんなにも自信たっぷりな理由が分かった。

「あぁ。つまり、今までうちの子はどの集団においても最優秀生徒だったのに、イーニシュフェルト魔導学院に入った途端成績がた落ちしたから、文句つけに来たんですね」

ナジュが、俺の言いたいことを綺麗に代弁してくれた。