神殺しのクロノスタシス2

俺達は、何とかユーマ母を、応接室に連れてくることに成功した。

はぁ。

でも、本題はここからなんだよなぁ。

とりあえず、色々トラブルになりそうなイレースとナジュを、応接室から出そうとした…の、だが。

「何処へ行くの!?あれだけ言ってくれたんだから、疚しいことなんて何もないはずでしょ!何で逃げるのよ!」

ユーマ母は、ヒステリックに怒鳴った。

おいおい、マジかよ。

この二人を同席させるとか。

火に油どころか、ガソリン撒き散らさんとも限らない。

特にナジュ。

良いか、お前は何も言うな、お前は何も言うなよ、と。

俺は心の中で念じながら、ナジュを睨んだのだが。

こんなときだけ、ナジュは知らん顔をしていた。

あの野郎…!必要ないときはすぐ人の心を読む癖に。

わざとやってやがるな。

「まぁお母さん、落ち着いて。はい、お茶どうぞ」

シルナは、何とかユーマ母の怒りを収めようと、お茶と茶菓子を出した。

「これね、知り合いにもらったんですけど、王室御用達の高級菓子店で、」

「それより、私の息子の成績表のことですけど」

駄目だ、シルナ。

王室御用達の高級菓子で、保護者は釣れない。

「どういうことなんです?これは」

トントン、と成績表を指差すユーマ母。

そういや記憶にない生徒だと思ってよく見ると、このユーマ・ウェズライ。

まだ一年生なのだ。

つまり、ナジュが潜入したときに、一緒に入学してきた生徒なのだ。

ナジュとは、クラスが違ってるけど。

「どういうことと申されましても…。当校の成績評定に基づいて…」

「だったら何でこんなに低いんですか!おかしいでしょ!」

「おかしいのはあなたの頭と服でしょうに…」

おい、馬鹿ナジュ。

黙ってろって。

あまりの失礼な発言に、ユーマ母がぶちギレてないかと心配したが。

怒りのあまり、ナジュがこそっと囁いた罵詈雑言は、聞こえていないようだった。

良かった。

いや良くねぇ。

やっぱりナジュだけは、追放した方が良いのでは?

このままだと、火に油どころか、ダイナマイト投入しそう。

しかもそれを面白がるような奴なんだから、最早救いようがない。

「うちの子は優秀なんです!こんな成績表は有り得ません」

きっぱりと、ユーマ母は言い切った。

有り得ませんって言われても…。

…有り得るんだから、仕方ないじゃん。

「え、えぇと、ユーマ君は、授業にもちゃんと参加して、課題もちゃんと提出してくれて、とても良い子ですよ」

シルナは、何とかユーマ母の怒りを静めようと、とりあえずおだてていた。

お前、そういうの得意だよな。

ユーマ母も、ふふん、とばかりにご満悦の様子。

しかし。

この場には、容赦がないことで有名な、元鬼教官がいる。

「イーニシュフェルト魔導学院の生徒ならば、病欠でもなければ、授業に全て参加し、課題は全て期限内に提出することは当然です」

お馬鹿。イレース。

まぁそう言われちゃそうなんだけど、今それを言っちゃ駄目なんだって。

折角収まりかけていた熱が、再燃。

「何ですって!?イーニシュフェルトの教師だからって、お高くとまって!あんた達にいくら払ってると思ってるの!?」

やべぇ。

モンペあるあるが始まっちゃったよ。

「学費払ってるのはこっちなんだから。」

「あんたらの給料払ってんのはこっちなんだから。」

モンペあるあるなんだよ、これ。

俺達だって、もう学院を経営して長い。

この手のモンスターとは、何度も戦ってきた。

そして、何度こんなことを言われたか。

その度に、俺は天を仰ぎたくなるのだ。