神殺しのクロノスタシス2

「30%割引…ですか?」

「えぇ。それが、新聞部部長のベルカさんのご実家が、結構大きな温泉宿を経営しているそうで」

へぇ、そうだったのか。

温泉宿の娘が、何故新聞部に。

いや、関係ないけど。

「パンフレットももらいましたよ。ほら」

ナジュは、ベルカの実家が経営しているという、温泉宿のパンフレットを見せてくれた。

マジか。パンフレットまで出してるの?

観光客用じゃん。

「へぇ…。紅葉見ながら温泉入れるのか…」

露天風呂から見える風景が、でかでかとパンフに掲載されていた。

成程。これは綺麗だ。

「我々の遠足は日帰りですよ。泊まり客じゃなくても貸切出来るんですか?」

そういえば。

さすがに、一泊して帰るほどの予算はないぞ。

それもう遠足じゃなくて、旅行だ。

「だからこそですよ。泊まりの観光客が来るのは夕方以降だから、昼間の間は格安で、お風呂だけ入れるようにしてあるそうです」

あぁ、成程。

メインは泊まり客だけど、昼間の間は宿は閑散としている。

だから、その暇な時間に合わせて、温泉だけ入って帰れるようにしてる、と。

経営戦略だな。

「なかなか良いですね…。30%割引は大きいです」

大蔵省、熟考中。

ここで困るのがシルナである。

「ちょっと待って、イレースちゃん。早まらないで!」

何をだよ。

「スイーツバイキングだよ?スイーツバイキング。皆好きでしょ?」

「皆が好きとは限らないだろ…」

そりゃ、お前と女の子達は喜ぶかもしれないけど。

男子生徒の中には、甘いものが好きでない者もいるだろう。

まぁその点は、露天風呂でも一緒なのだが。

「しかも10%引きだよ?スイーツ食べ放題で10%だよ?」

必死のアピールを試みるシルナ。

「ですが、所詮10%でしょう?温泉の方は30%。ざっと試算してみましたが、経費としては、温泉の方が少し安いです」

へぇ、そうなんだ。

イレース、計算早いな。

シルナの形勢が不利になってきた。

しかし、シルナは諦めない。

「そう、ほら…。あっ!その温泉!」

何かを閃いたようだ。

シルナは、我が意を得たりという風に、大袈裟に言った。

「この温泉宿、王都じゃないよ。隣の市…」

交通費の差で、何とかスイーツバイキングに誘導しようとするシルナだが。

しかし、ナジュの方が一枚上手だった。

「あ、20名以上の団体客は、無料送迎バス出してくれるそうです」

「決まりですね」

大蔵省、即決。

シルナ、敗北。

「…うぅ…スイーツバイキング…」

残念だったな、シルナ。

挑んだ相手が悪かった。

で、もう一度改めて言っとくけど。

遠足って、お前が楽しむ為にあるんじゃなくて、生徒の為にあるものだからな。