神殺しのクロノスタシス2

しかし、シルナは。

「酷い!何で分かってくれないの?生徒が、生徒が来てくれないんだよ!?大変なことだよ!」

「知らねぇよそんなん!」

「ちゃんとお菓子も用意してるのに!何で~!!」

あー面倒臭い。

本気で面倒臭くなってきた。

「…かくなる上は、もう仕方ない」

お?

諦めたか?

シルナは、ぎろりと目を光らせ。

「…廊下を歩いてる生徒を捕まえて、連れてこよう」

「…拉致じゃん…」

捕まえられる生徒の身にもなってみろ。

普通に廊下を歩いてたら、背後から血相変えた学院長に捕まって、学院長室に連行されるんだろ?

気の毒な。

一生モノのトラウマだぞ。

「別に遊びに来なくても良いじゃん…。皆忙しいんだよ」

勉強あるし。宿題あるし。

シルナの部屋に来て、菓子食ってるようじゃあな。

それより、魔導書の一冊でも読んでた方が、よっぽど将来の為になる。

しかし。

「そんなの嫌だ!寂しいもん!」

寂しいってお前…。

生徒の都合も考えてやれよ。何で自分の都合?

「生徒はねぇ、六年間しかうちにいてくれないんだよ!?それから先は、もう会いに来てくれないかもしれない!この六年という限られた歳月の中で、どれだけ生徒との距離を縮められるか、私が毎年、どれだけ苦心してると思ってるの!?」

めちゃくちゃ力説された。

言いたいことは分かった。

頭悪そうな理論だということも分かった。

要するに、生徒と遊びたいのね。

「おかしいよ~…。何で遊びに来てくれないの~…。おかしいよ~…」

「何でって言われてもな…」

学院長室があまりに様変わりしてしまったから、遠慮してるとか?

それとも、俺達がいない間に何かあったとか?

言われてみれば、確かにここ最近、誰も来てないな。

大抵放課後になると、生徒が何人か、遊びに来るんだけど。

お菓子目的の子もいれば、課題を教えてもらおうという生徒もいる。

それなのに、俺達が学院に戻ってからというもの、誰も生徒が来ていない。

生徒達が、俺達の帰還を知らないから?

まだ学校に戻ってきてないと思ってるのか?

いや、そんなはずはない。

俺達が帰ったことは、三日前の全校集会で伝えてある。

シルナ自身が「帰ってきたよ~ただいま!」って嬉しそうに、全校集会で言ってた。

だから、皆俺達が帰ってきたことは知ってるはず。

それなのに、生徒がやって来ない。

「考えてみれば…確かに変だな」

「でしょ!?」

いや、そんな涙目になるほど重要なことだとは思わんけど。

生徒にも、きっとそれぞれ事情があるんだろ。

別に何ということも…。

「…陰謀だ」

「は?」

「何者かの陰謀に違いない!」

ちょっと、この人変なこと言い始めてるんだけど。

お前と生徒との距離を遠ざけることによって、誰に何のメリットがあるの?

「早速調査しよう!羽久!」

「は?何で俺まで」

「待っててね生徒達!私と羽久が、きっとこの陰謀を暴いてみせるから!」

…ややこしい話になってきた。

やっぱり、さっき強引にでも、逃げておけば良かったなぁ…。

しかし、時は既に遅く。

何故か俺は、パワハラ学院長のせいで、陰謀とやらの調査に乗り出すことになった。