神殺しのクロノスタシス2

すると、そこに。

「入りますよ、学院長」

シルナ部屋リフォームの匠、イレースが部屋に入ってきた。

良いタイミングだ。

シルナは、早速イレースに食って掛かろうとした。

「イレースちゃん!私がいない間に、なんて酷いことを!長年溜めてたお菓子の、」

「それより学院長先生、『カタストロフィ』の構成員を倒したそうですね」

「え?あ、うん…。倒してきたけど…」

「そうですか。お疲れ様でした」

「あ…ありがとう…?」

怒ろうとしてたはずなのに、なんか労われちゃって、怒るタイミングを逃したらしいシルナ。

「それはそれとして」

イレースは、ドサッ、と持ってきた書類の束を、綺麗になったばかりのデスクの上に置いた。

すげー厚さ。豆腐みてぇ。

「あなたが不在の間、溜まっていた仕事です」

「…」

やはり、イレースに慈悲はない。

「最低でも、今週いっぱいに終わらせてくださいね。それでは」

「えっ、あっ、イレースちゃ、お菓子、あの、えっ?仕事?」

言いたいことがあり過ぎて、あわあわしているシルナをよそに。

イレースは、やるべきことはやったとばかりに、すたすたと去っていった。

…さすが、緊急時の学院長代理。貫禄が違うな。

で、取り残されたシルナ。

「…ナジュ君」

「はい?」

「君、そこに…学院長の椅子に座ってるんだから、これ君がやっ、」

「さーて!僕もそろそろ授業なんで、行ってきますねー」

「ナジュくぅぅぅぅぅん!」

ナジュにも慈悲はなかった。

まぁ、あいつは昔からそういう奴だ。

で、取り残されたのは俺とシルナ。

「…羽久」

「…何だよ」

「羽久だけは、私を見捨てないよね…?」

「…」

学院長、涙目。

…はぁ。

俺にも慈悲はないと言ってやりたいところだが、色々ゴタゴタして、まだ傷心中だろうし。

ちょっとは甘やかしてやるか。

「仕事は手伝えないけど」

「酷い!」

「話を最後まで聞け」

大体学院長の判が要る仕事を、一教師である俺が手伝える訳ないだろ。

そんな仕事なら、イレースがとっくにやってる。

そうじゃなくて。

「シルナの、お気に入りのケーキ屋のマカロン」

「!」

「と、チョコレートだっけ?」

「!!」

「買ってきてやるから、仕事頑張れ」

「…羽久ぇ…」

シルナ、感激の涙。

はいはい、良かったね。

その仕事の山が終わったら、ちゃんと糖分摂取させてやるよ。