暗くて、じめじめとした座敷牢には、光が差さなかった。
ここに閉じ込められてから、どれだけの時間がたったのか、もう分からない。
それでも最初の頃は、月に一度だけ、母親がちらりとだけ、様子を見に来た。
話しかけてくれる訳ではない。
ただ、生きてるのか死んでるのかを確認しただけで。
その頻度も、最初は月に一度だけだったのに。
三ヶ月に一度になり、半年に一度になり、年に一度になり。
今はもう、何年になるのか分からない。
この部屋には、時間の概念がなかった。
最早この場所が、私の全世界だった。
外の世界なんてものが、本当にあったんだろうか。
もう、思い出せないけど。
あまりに長く、ここに閉じ込められていたせいで。
もう、生まれたときからここにいたような気がする。
外の世界。
あれは夢だったんだろうか。
ずっと焦がれていた外の世界。
誰かと繋がって、誰かと話せて、誰かに触れてもらえる世界。
もう、ずっと昔の話のように思える。
私は、何故ここにいるのだろう。
何で、他の人みたいに外の世界にいられないんだろう。
何で、私だけこんな暗くて冷たい場所にいなきゃならないんだろう。
まるで囚人のように。
私は、閉じ込められるような悪いことをしたんだろうか。
それとも、私は生きてることそのものが罪なのだろうか。
母親は、私を鬼と呼んだ。
人ではなく、鬼だと。
だから、きっとそれが私の罪なのだろう。
もう一生、外に出ることは叶わないのだろう。
「…」
誰かの温もりが欲しい。
誰かに手を繋いで欲しい。
でもここには、何もない。
誰も助けてはくれない。
私は、右の手で、左の手を繋いだ。
自分で自分の手を繋ぐ。
少しでも、心の休まるものが欲しくて。
でも、私の両手は氷のように冷たかった。
胸の中にある、この気持ちの名前を知らなかった。
これは、一体何なんだろう。
ずっと何かを求めている。
この気持ちの名前を知りたい。
座敷牢の中は寒くて冷たくて、暗くて汚れていて。
その中にいる私も、ゴミみたいに汚くなって。
それでも私は生きている。
きっと誰にも、生きていることを望まれてないのに。
誰かが、この座敷牢から出してくれることを夢見ている。
そんな日が、来るはずないのに。
だって私は鬼。
忌み子。
皆私をそう呼んだ。皆私に痛いことをして、殺そうとした。
私は誰からも嫌われている。
それなのに、私は探している。
求めている。
この胸の中にある、名前の分からない感情を埋めてくれるものを求めている。
地下に続く扉が開かないかと、ずっと見つめている。
この南京錠を開けてくれる人が来ないかと。
そうすれば、そうしたら。
私は救われる。そんな気がするのだ。


