ここは私の居場所。
ここが私の居場所。
イーニシュフェルトの里。生まれ故郷。ふるさと。
愛しい里の仲間達。家族達。友人達に囲まれて。
魔導の勉強をしながら、魔法の腕を磨き。
穏やかに、変わらぬ結束で生きていく。
平和で、穏やかで、ゆったりと過ぎていく平穏な日々。
それなのに、私の傍には何かが足りない。
心の中に、ぽっかりと穴が空いている。
どんな平穏で安心した暮らしでも、埋めることの出来ない心の穴。
この穴を埋める決定的な何かが、私には不足しているのだ。
そして、ある日。
そんな、終始上の空で過ごしている私を、族長が呼び出した。
「…何故呼ばれたか、自分でも分かっておるな」
「…はい」
族長と、二人きりの場で。
私は族長の足元に伏して、小さく頷いた。
「最近お主は、鍛錬に身が入っておらん。次期族長として、如何なものか」
「…私の、不徳の致すところです」
「そうであろうな」
自分が上の空で過ごしていることなんて、自分が一番よく分かっている。
分からないのは、その原因だ。
私はここにいるべき存在なのに。
私はここにいてはいけない存在のような気がする。
「何ぞ気にかかることがあるなら、ゆうてみよ」
「…」
族長が、これほどまでに気をかけてくれている。
滅多にないことだ。
それだけ私に、次期族長として期待をかけてくれているのだろう。
嬉しいことのはずなのに。
どうしてこんなに…後ろめたい気持ちになるのだろう。
あまりにも後ろめたくて、死にたくなってくる。
「…では、族長殿。一つ、質問をしても宜しいでしょうか?」
族長は、小さく頷いた。
私は、あのことを聞いてみることにした。
私の心に引っ掛かっている言葉。
「…神殺しの魔法…。神殺しの魔法を、使うことはあるのでしょうか」
私が、そう尋ねると。
族長は、思ってもみなかったという顔をした。
「神殺しの魔法…じゃと?」
「はい。必要ではありませんか?」
「…」
族長は俯いて眉間を抑え。
やれやれとでも言うように、頭を振った。
「次期族長ともあろう者が、そんな与太話に惑わされるとは。なんと情けないことよ」
「…与太話…?」
何故、これが与太話?
大事なことじゃないか。
だって神殺しの魔法を使って、私は、
…あれ?
神殺しの魔法を使って、私は…何を…。
本当に…使ったのか?
「痴れ者めが。あんなものは、ただの伝説じゃ。大昔の文献でしか記されていない」
「で、ですが、実際に使った者が…」
「あんなもの、伝説どころか、童話と変わりない。魔導師が、神々を討ち滅ぼしたなどと…。馬鹿馬鹿しい。この世界の何処に、神などという存在がいるものか」
「…!!」
…神が、いない?
この世界には、神がいない?
じゃあ、神殺しの魔法は?
ただの伝説で、子供が好んで聞くような童話に過ぎなくて?
神殺しの魔法なんて、誰も使わないと言うのか。
「何処で吹き込まれたのか知らんが、下らん空想に浸っている暇があれば、鍛錬に集中せよ」
「…」
「全く、神殺しの魔法など…。そのようなほら話に踊らされおって、情けない」
「…」
「この世界に神などおらぬ。世界にあるのは、人と動物だけよ。従って、イーニシュフェルトの里の賢者は、人類の代表として君臨せねばならぬ。そのことを肝に銘じておくのだ」
「…はい」
「お前には、このイーニシュフェルトの里を守っていく、その義務がある。分かったな」
「…はい」
…そう。そうなのだ。
それで、良いじゃないか。そう。
この世界に、神なんていない。
ここが私の居場所。
イーニシュフェルトの里。生まれ故郷。ふるさと。
愛しい里の仲間達。家族達。友人達に囲まれて。
魔導の勉強をしながら、魔法の腕を磨き。
穏やかに、変わらぬ結束で生きていく。
平和で、穏やかで、ゆったりと過ぎていく平穏な日々。
それなのに、私の傍には何かが足りない。
心の中に、ぽっかりと穴が空いている。
どんな平穏で安心した暮らしでも、埋めることの出来ない心の穴。
この穴を埋める決定的な何かが、私には不足しているのだ。
そして、ある日。
そんな、終始上の空で過ごしている私を、族長が呼び出した。
「…何故呼ばれたか、自分でも分かっておるな」
「…はい」
族長と、二人きりの場で。
私は族長の足元に伏して、小さく頷いた。
「最近お主は、鍛錬に身が入っておらん。次期族長として、如何なものか」
「…私の、不徳の致すところです」
「そうであろうな」
自分が上の空で過ごしていることなんて、自分が一番よく分かっている。
分からないのは、その原因だ。
私はここにいるべき存在なのに。
私はここにいてはいけない存在のような気がする。
「何ぞ気にかかることがあるなら、ゆうてみよ」
「…」
族長が、これほどまでに気をかけてくれている。
滅多にないことだ。
それだけ私に、次期族長として期待をかけてくれているのだろう。
嬉しいことのはずなのに。
どうしてこんなに…後ろめたい気持ちになるのだろう。
あまりにも後ろめたくて、死にたくなってくる。
「…では、族長殿。一つ、質問をしても宜しいでしょうか?」
族長は、小さく頷いた。
私は、あのことを聞いてみることにした。
私の心に引っ掛かっている言葉。
「…神殺しの魔法…。神殺しの魔法を、使うことはあるのでしょうか」
私が、そう尋ねると。
族長は、思ってもみなかったという顔をした。
「神殺しの魔法…じゃと?」
「はい。必要ではありませんか?」
「…」
族長は俯いて眉間を抑え。
やれやれとでも言うように、頭を振った。
「次期族長ともあろう者が、そんな与太話に惑わされるとは。なんと情けないことよ」
「…与太話…?」
何故、これが与太話?
大事なことじゃないか。
だって神殺しの魔法を使って、私は、
…あれ?
神殺しの魔法を使って、私は…何を…。
本当に…使ったのか?
「痴れ者めが。あんなものは、ただの伝説じゃ。大昔の文献でしか記されていない」
「で、ですが、実際に使った者が…」
「あんなもの、伝説どころか、童話と変わりない。魔導師が、神々を討ち滅ぼしたなどと…。馬鹿馬鹿しい。この世界の何処に、神などという存在がいるものか」
「…!!」
…神が、いない?
この世界には、神がいない?
じゃあ、神殺しの魔法は?
ただの伝説で、子供が好んで聞くような童話に過ぎなくて?
神殺しの魔法なんて、誰も使わないと言うのか。
「何処で吹き込まれたのか知らんが、下らん空想に浸っている暇があれば、鍛錬に集中せよ」
「…」
「全く、神殺しの魔法など…。そのようなほら話に踊らされおって、情けない」
「…」
「この世界に神などおらぬ。世界にあるのは、人と動物だけよ。従って、イーニシュフェルトの里の賢者は、人類の代表として君臨せねばならぬ。そのことを肝に銘じておくのだ」
「…はい」
「お前には、このイーニシュフェルトの里を守っていく、その義務がある。分かったな」
「…はい」
…そう。そうなのだ。
それで、良いじゃないか。そう。
この世界に、神なんていない。


