翌朝。

「…」

何かの間違いかと思っていたが。

そこには、やはり昨日と変わらない、イーニシュフェルトの里があった。

…私は、夢を見ているのだろうか?

それとも、今までの方が夢だったのか?

…いや、待て。

…今までって、何だったっけ?

私は、本当にここに…。

「…シルナ!」

「はっ、はい?」

いきなり名前を呼ばれて、私は振り向いた。

そこには、昨日私に大目玉を食らわせた、族長が立っていた。

「昨日の分、今日の鍛錬はお前だけ二倍にする!良いな!」

「…はい…」

頷くしか出来ない。

だって、ここはイーニシュフェルトの里で。

里に住む限り、族長の言うことは絶対。

「はは、昨日サボったツケだな」

幼馴染みは、私の肩に手を置いて笑いかけ。

「それだけ、族長もシルナに期待してるってことだよ。シルナは次期族長に相応しいって」

「…私が…次期、族長…」

…全く、全然、思いもよらなかった。

私が、イーニシュフェルトの里の族長?

そんな未来が、存在するのか?

「まぁ仕方ないよな。誰も異論ないよ。お前の魔力と魔導理論は、誰も真似出来ないし」

「皆シルナのこと認めてるんだよ。期待に応えてやりなって」

「…」

仲間達に言われて、私は頷きはしたが。

…私が、族長?

そんなものになれるのか?

私がなるのは…族長じゃなくて…。

ここにいる人達は…。

「若造共!早くせんか!」

族長が、私達に向かって怒鳴り付けた。

「はいはい、今行きます」

「ほら、シルナも早く行こう。二日連続大目玉は嫌だろ?」

「あ、う、うん…」

何なんだろう。

当たり前の光景。見慣れた景色。いつもの優しい仲間達。

ここが、私の生まれ故郷。

でも、何かが違う。

この、胸の中にある大きな違和感は、一体何なんだろうか。