その日。

私は、自分の身に起きたことが信じられなかった。

一日中、ずっと挙動不審だった。

何もかもが、私の記憶にあるのと同じ。

全てが同じ…イーニシュフェルトの里。

ルーデュニア聖王国が建国される前。

私の生まれ故郷。

まだ…世界が平和だった頃の。

まるで、昔にタイムスリップしたかのようだった。

でも、不快だとは思わない。

だってここには、私の仲間がいる。

家族とも言える…私のふるさとの仲間達が。

その日の夜、私は困惑したまま、むしろで作った簡易ベッドに横たわった。

私だけではない。

焚き火を囲み、むしろを地面に敷いて、夜空を眺めながら皆で眠るのが、この里では当たり前だった。

…この現象は、一体何なんだろう。

私は、何でこんなところに…。

「…なぁ、シルナ」

「…」

私の横に寝ていた仲間…私の幼馴染み…が、こっそりと私に話しかけてきた。

あまり大きな声を出したら、皆を起こしてしまうから。

「…何?」

「お前、なんか今日変だぞ」

…変。

私が?

「昼間の鍛錬もサボるし、ずっと挙動不審だったし…」

「…それは…」

だって、何もかもが不可解で。

自分がどうして、ここにいるのかも。

「何かあったのか?」

「…」

心配そうな顔の幼馴染み。

…何かあったのかなんて、私が聞きたいくらいだ。

だってこの場所はもう…。

「…いや、何もないよ」

幼馴染みを心配させたくなくて、私はそう答えた。

何もない、はずがないのに。