仲間達に導かれるようにして、私は里に戻った。

遠い過去の記憶の中の風景が、目の前に広がっていた。

…何で。

二度と見ることはないと思っていたのに。

「お、やっと戻ってきたぞ、この若造め」

里の者が、私を見るなりそう言った。

…若造。

普段羽久に、おっさんだの中年だの言われてるせいで、自分が若造呼ばわりされることに、違和感しか感じなかった。

今度から羽久には、若造って呼んでもらおう。

え?羽久?

「族長がお怒りだぞ、さっさと行かなきゃ大目玉だ」

「さっさと行っても大目玉だと思うけどな」

里の者はけらけらと軽快に笑った。

私は、この状況をどう理解したら良いのか分からなかった。

これは何だ?

私はさっきまで、何をしていたんだろう?

誰と…。

「ほら、シルナ。族長のお出ましだぞ」

里の仲間が、私の背中を叩いた。

目の前には、腰を曲げて、重そうな杖を持って歩く、威風堂々たる族長の姿があった。

…あぁ。

あの日のままの姿だ。

「お主!一体何処に行っておった!」

そして、あの日のままの威厳ある声で、私に怒鳴り付けた。

後ろで聞いていた里の仲間達は、我関せずとばかりに、半笑いで後ずさった。

「イーニシュフェルトの里の賢者ともあろう者が…鍛練を怠るとは何事じゃ!」

「ぞ、族長…」

何で。まさか。

そんなはずないのに。

だってあなたは、あの日。

しかし、族長は私の異変に気づかない。

「お主は将来、この里を背負って立つ身。鍛練を怠ることは、金輪際許さん!良いな!」

「は、はい…」

私は、言われるがままに頷いた。

だが、頭の中はパニック状態。

ここは、一体何処?

一体何で、失われたはずの全てが、私の前にあるのだろう。

今、この瞬間に。