…一時間後。

学院長室は、素晴らしく美しく生まれ変わっていた。

必要書類は、部門ごとにファイルに閉じられ。

整然として並べられていた。

デスクの引き出しには、学院長秘蔵のお菓子が入っていたのだが。

それらも全部出され、代わりに、文房具やその他必需品が入れられていた。

…あーあ…。

一応、学院長が大切にしていた、生徒からの手紙や写真などは、別の容器に入れて保管されていた。

そこはちゃんと優しい。

しかし、それ以外は、全く容赦がなかった。

途中、あまりの過重労働のせいで、シュレッダーが動かなくなったりもしたのだが。

イレースさんは、動かないシュレッダーに用はないとばかりに、蹴りを一発食らわせ。

シュレッダー君の方も、「このままじゃ、紙だけじゃなくて自分まで裁断されてしまう」と怯えたのか。

その蹴り一発で、直った。

テレビを叩いて直す人はいるけど。

シュレッダーを蹴りで直す人もいるんだな。

いやぁ世の中って広い。

こうして出来た、パンパンになったゴミ袋の山は、10個以上あった。

どんだけ溜め込んでたんだって話。

これには、俺も天音さんもドン引き。

今度からあの学院長、ゴミ院長って呼ぼう。

あながち悪口じゃないよこれ。

「ふぅ…。良い仕事をしました」

良い汗かいてますね、イレースさん。

「さて、私はこのゴミ袋を、収集箱に持っていくので。天音さん、手伝ってください」

「あ、はい」

指名された天音さんは、パンパンになったゴミ袋を手にした。

…。

「僕も手伝いますよ?」

二人だけで持てるか?これ。

十個以上あるんだから。

何回か往復しなくちゃいけないだろうし。

「あなたはこの後、授業でしょう」

「あー…。そうでしたね」

僕この後、第二稽古場で、四年生の実技授業監督しに行かなきゃならないんだっけ。

第二稽古場は少し校舎から離れているし、そろそろ行かなきゃ間に合わなくなりそう。

「こちらは良いので、あなたは授業をお願いします」

「分かりました。じゃあ行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

天音さんに見送られ、僕はそのまま、授業の為に第二稽古場に向かった。







…その後、何が起きるかも知らずに。