…こいつ。

「お前…。自力で脱出出来るんだったら、初めからそうしろよ…」

大怪我しながら助けようとした俺、馬鹿みたいじゃないか。

「だって、ジュリスがじっとしてろって」

そうでした俺が悪かったです。

まぁ良い。これで戦況は逆転した。

「ベリクリーデ」

「何?」

「お前、あのケルベロス、一人で倒せるか?」

「さっきみたいに、どかーんってすれば良いの?」

「あぁ。どかんと一発やってくれ」

「分かった」

そう言うなり。

ベリクリーデは、残されたケルベロスの左の首に、自分からよじ登っていた。

ケルベロスが牙を剥き、ベリクリーデをぱくん、と口に飲み込んだ。

…大丈夫…だよな?

ちょっと手助けした方が良いのか、最悪ケルベロスの胃を切開して救出しなければならないのかと思ったが。

その心配は、全くなく。

ケルベロスの身体が、風船のように急激に膨らみ。

ぶくぶくに太った身体が、ばちんと弾けた。

辺り一面に、ケルベロス…だったものの肉片が、雨あられのように降り注いだ。

これには、サディアスも呆然。

俺も、呆気に取られていた。

「どかーんってやってきたよ、ジュリス」

ケルベロスの肉片と胃液にまみれたベリクリーデが、何事もなかったかのようにてくてく歩いてきた。

凄い臭いするぞ、お前。

誰が、胃の中にまで入れと言った。

文句言ってやろうかと思ったが、ベリクリーデの、この。

「私、何かやっちゃいました?」みたいな、きょとん顔を見ていると。

「…」

さすがの俺も、何も言えないのだった。