神殺しのクロノスタシス2

かつて世界で起きた聖戦。

神と神の争い。

最終的にそれを鎮めたのは、イーニシュフェルトの里の者達であり、そして。

いずれ復活するであろう邪神の責任を、たった一人の男に押し付けた。

シルナ・エインリー一人だけに。

なぁ、それって不公平じゃないか?

今に至るまで、彼がどれほど苦しみ、一人で苦悩し、死者の呪詛の声を聞きながら生きてきたと思う?

たった一人の背に乗せるには、あまりにも重過ぎる。

世界の平穏と引き換えに、一人の人間を人身御供として差し出してるようなものだ。

でもその人身御供だって、人間なんだ。

感情のない人形ではいられない。

一人なら、寂しくもなろう。

二人になれば、満たされもしよう。

愛したくもなるだろう。

愛されたくもなるだろう。

それは彼が生まれたときから、保証されていなければならない、人間として当然の権利だ。

「この世界は、今この時間は、シルナ・エインリーのお陰であるんだ」

「…」

あの男が神殺しの魔法を使ったから。

そのお陰で、邪神に支配される世界を防ぐことが出来た。

いわばシルナ・エインリーは、世界の英雄のはずなのだ。

それなのに、何故彼が悪者にされる?

英雄は、何をも愛しては駄目か?

いついかなるときも、世界の平和だけを考えていなきゃ駄目か?

笑ったり、泣いたり、愛したりしては駄目か?

生きてるから、文句だって言えるのだ。

あんたら、そこのところ、分かってるのか?

「もう充分だろ。解放してやれよ」

イーニシュフェルトの聖賢者なんて肩書き、もう彼には必要ない。

ただ愛する者の為に、生きさせてやれよ。

例えそれが、世界の破滅に繋がるのだとしても。