…この女。

自分が狙われてる自覚はあるのか?

表情がいまいち変わらないから、よく分からないが。

危機感がないことは分かる。

彼女とペアを組むことを決めたのは、他でもない俺だが。

本当にそれで良かったのか、心配になってきた。

あまりにも能天気。そしてマイペース。

まぁ、この女に限っては、案外それくらいで丁度良いのかもしれない。

下手にベリクリーデが好戦的な性格をしていたら、彼女の内に潜む者が、うっかり顔を出しかねんからな。

とりあえず、大人しくしとけと言えば、大人しくしてくれるから。

そういう点、素直で良い。

振り回されるのは御免だしな。

「ねぇジュリス」

「あん?」

退屈そうに足をぷらぷらしていたベリクリーデが、くるりとこちらを向いた。

「退屈だね」

敵に命を狙われてる癖に、退屈とは。

もっと危機感を持てと言っても、彼女には通用しない。

だったら、付き合ってやる他にない。

「あぁ、退屈だな」

実際、俺はベリクリーデのボディーガードをするだけで、他には何もしてないからな。

そりゃ確かに退屈だが、でもそういう問題ではない。

今頃他の仲間達が、残る『カタストロフィ』の四人を追ってるかと思うと。

もう少し、危機感と言うものを持ってもらいたいというものだ。

口に出しては言わないけどな。

「ジュリスも聞いた?もう二人も倒したんだって」

「あぁ、聞いたよ」

『カタストロフィ』六人のうち、二人は始末したらしい。

しかも、ご丁寧にリーダー直々にとどめを刺しに来たそうじゃないか。

俺もかつて、ギャング共の仲間を率いていた時期があるが。

よくもまぁ、自分の部下を、容赦なく殺せるもんだ。

別に裏切った訳でもない、志を共にする仲間なのに。

そりゃ、捕まえれば尋問され、投獄されるだろうけど。

こちら側にナジュがいる限り、いくら尋問に黙秘したとしても、無駄だからな。

心を読まれたら終わり。

だからって、自分の部下をあっさり殺せるか?

そこまでして作り出したい、『あるべき世界』ってのは、一体どんな理想郷なんだろうな。

「ねぇジュリス」

「何だよ?」

「退屈だから、話し相手になって」

「…」

唐突に、いきなりこれだからな。

本当、マイペースで困る。

さすがの俺も、ついていけないくらいだ。