「君は、イーニシュフェルト魔導学院でやっていく能力がある。だから入学出来たんだ。才能がなかったら、そもそも入学出来てないよ」
その通り。
自慢じゃないが、イーニシュフェルト魔導学院の倍率、何倍だと思ってるんだ。
才能のない奴を入学させる枠なんて、一人分だってあるものか。
シャーロットはまがりなりにも、その何倍もの倍率を勝ち抜いてきた、選ばれし魔導師の卵なのだ。
才能がない訳がない。
才能はあるのに、ただ自信がないだけなのだ。
「シャーロットちゃん。私が思うに、天才には二種類あるんだ」
「二種類…?」
出た。
シルナが、自信をなくした生徒によく使う台詞だ。
「一つ目は、聞いたこと、教えてもらったことをすぐに覚えてしまう、直感型の天才。生まれながらの天才肌って奴だね。大抵のことは、何でも人並み以上にこなせる人」
「…」
「イーニシュフェルトに来ている生徒のうち、大半がこれに当たる」
「…」
…それなのに、私は違う。
シャーロットは、そう言いたそうに俯いた。
そうだ。シャーロットは、そのタイプの天才ではないのだろう。
だが。
「そして二つ目。一度聞いただけじゃ分からないから、何度も何度も繰り返して勉強して、コツコツ努力して身に付けていくタイプ。これもまた一つの才能で、シャーロットちゃんはこっちのタイプの天才だね」
「わ…私が天才なんて」
「いや、天才だよ」
俺に言わせれば、こっちのタイプの天才の方が、得難い人材だと思っている。
「どちらのタイプの天才にも、メリットとデメリットがある。まず前者の方だけど…」
と、シルナは説明を始めた。
「教えられたことを一度で覚えられるのは、それこそ天才だよね。時間をかけることなく、実力をつけることが出来る。傍目から見れば、羨ましいよね」
「…」
大きく頷きたいであろうシャーロット。
彼女にとっては、前者のタイプの天才は、羨望の対象だろう。
しかし、そんな彼らにもデメリットがある。
「だけどね、魔導師としての人生は長い。感覚だけでずっとやっていくと、いずれ必ずスランプに陥るときが来る。才能の頭打ちって言うかな…。いつか、限界が来るんだよ」
「限界…」
何でも器用にこなすのは結構だが。
それだけでやっていけるほど、魔導師の世界は甘くないってことだな。
「そして、いざスランプを迎えたとき、今まで感覚だけで魔法を使ってきた子は、途端に困ることになるんだ。何せ今まで感覚で魔法を使ってきたんだから、今更理論とか基礎とか、問われても分からないんだよ」
普段、何気なくやってることをいちいち意識したことがあるか?
立ち方座り方歩き方、いちいち考えたことがあるか?
いざそれが出来なくなったとき、自分がかつてどうやってそれをやっていたのか、分からなくなる。
一度スランプに陥ると、再び立ち直るのに時間がかかる。
それが、この直感型天才の最大の欠点なのだ。
最悪、スランプのまま一生立ち直れず、魔導師をやめてしまう人もいる。
「一方シャーロットちゃんみたいな、努力型の天才。このタイプは、呑み込むのに時間がかかる。なかなか理解出来なくて、辛い思いをすることもあるだろう」
今のシャーロットが、さながらそれだ。
「だけどこのタイプは、一度呑み込むと忘れない。呑み込んだときに、完全に自分のものにしてしまうからね。スランプにも陥りにくいし、もしスランプに陥っても、すぐに立ち直れる」
自分の中に、確かに積み上げてきたものがあるから。
例えスランプに陥ったとしても、すぐに取り戻すことが出来るのだ。
このタイプの最大の強みが、これだ。
「だからシャーロットちゃんは、いくら時間がかかっても良い。分かんなくても良い、ついていけなくても良い。シャーロットちゃんのペースで、ゆっくりゆっくり、基礎から積み上げていけば良い」
「…」
「諦めずに積み重ねていったものは、決して君を裏切らない。いつかそれが大きな力になって、シャーロットちゃんの最大の武器になる日が来る」
「…本当に?本当にそんな日が来るんですか?」
「来るよ。大丈夫」
シルナが、今まで何人の生徒を見てきたと思ってる。
無駄に年齢だけ重ねてるように見えるが、これで一応、年の功、って奴もご立派に持っていらっしゃるのだ。この学院長は。
その通り。
自慢じゃないが、イーニシュフェルト魔導学院の倍率、何倍だと思ってるんだ。
才能のない奴を入学させる枠なんて、一人分だってあるものか。
シャーロットはまがりなりにも、その何倍もの倍率を勝ち抜いてきた、選ばれし魔導師の卵なのだ。
才能がない訳がない。
才能はあるのに、ただ自信がないだけなのだ。
「シャーロットちゃん。私が思うに、天才には二種類あるんだ」
「二種類…?」
出た。
シルナが、自信をなくした生徒によく使う台詞だ。
「一つ目は、聞いたこと、教えてもらったことをすぐに覚えてしまう、直感型の天才。生まれながらの天才肌って奴だね。大抵のことは、何でも人並み以上にこなせる人」
「…」
「イーニシュフェルトに来ている生徒のうち、大半がこれに当たる」
「…」
…それなのに、私は違う。
シャーロットは、そう言いたそうに俯いた。
そうだ。シャーロットは、そのタイプの天才ではないのだろう。
だが。
「そして二つ目。一度聞いただけじゃ分からないから、何度も何度も繰り返して勉強して、コツコツ努力して身に付けていくタイプ。これもまた一つの才能で、シャーロットちゃんはこっちのタイプの天才だね」
「わ…私が天才なんて」
「いや、天才だよ」
俺に言わせれば、こっちのタイプの天才の方が、得難い人材だと思っている。
「どちらのタイプの天才にも、メリットとデメリットがある。まず前者の方だけど…」
と、シルナは説明を始めた。
「教えられたことを一度で覚えられるのは、それこそ天才だよね。時間をかけることなく、実力をつけることが出来る。傍目から見れば、羨ましいよね」
「…」
大きく頷きたいであろうシャーロット。
彼女にとっては、前者のタイプの天才は、羨望の対象だろう。
しかし、そんな彼らにもデメリットがある。
「だけどね、魔導師としての人生は長い。感覚だけでずっとやっていくと、いずれ必ずスランプに陥るときが来る。才能の頭打ちって言うかな…。いつか、限界が来るんだよ」
「限界…」
何でも器用にこなすのは結構だが。
それだけでやっていけるほど、魔導師の世界は甘くないってことだな。
「そして、いざスランプを迎えたとき、今まで感覚だけで魔法を使ってきた子は、途端に困ることになるんだ。何せ今まで感覚で魔法を使ってきたんだから、今更理論とか基礎とか、問われても分からないんだよ」
普段、何気なくやってることをいちいち意識したことがあるか?
立ち方座り方歩き方、いちいち考えたことがあるか?
いざそれが出来なくなったとき、自分がかつてどうやってそれをやっていたのか、分からなくなる。
一度スランプに陥ると、再び立ち直るのに時間がかかる。
それが、この直感型天才の最大の欠点なのだ。
最悪、スランプのまま一生立ち直れず、魔導師をやめてしまう人もいる。
「一方シャーロットちゃんみたいな、努力型の天才。このタイプは、呑み込むのに時間がかかる。なかなか理解出来なくて、辛い思いをすることもあるだろう」
今のシャーロットが、さながらそれだ。
「だけどこのタイプは、一度呑み込むと忘れない。呑み込んだときに、完全に自分のものにしてしまうからね。スランプにも陥りにくいし、もしスランプに陥っても、すぐに立ち直れる」
自分の中に、確かに積み上げてきたものがあるから。
例えスランプに陥ったとしても、すぐに取り戻すことが出来るのだ。
このタイプの最大の強みが、これだ。
「だからシャーロットちゃんは、いくら時間がかかっても良い。分かんなくても良い、ついていけなくても良い。シャーロットちゃんのペースで、ゆっくりゆっくり、基礎から積み上げていけば良い」
「…」
「諦めずに積み重ねていったものは、決して君を裏切らない。いつかそれが大きな力になって、シャーロットちゃんの最大の武器になる日が来る」
「…本当に?本当にそんな日が来るんですか?」
「来るよ。大丈夫」
シルナが、今まで何人の生徒を見てきたと思ってる。
無駄に年齢だけ重ねてるように見えるが、これで一応、年の功、って奴もご立派に持っていらっしゃるのだ。この学院長は。


