神殺しのクロノスタシス2

気づいた途端に、寂しさと郷愁に襲われた。

いきなりの環境の変化。ましてやカリナから突然王都じゃ、他の国に来たのかってくらいカルチャーショックもあるだろう。

そもそも彼女は、まだ子供なのだ。

親元から離れるには、まだ早い。

イーニシュフェルトに来ている多くの生徒は、幼い頃からイーニシュフェルト魔導学院に憧れ、寮生活にも憧れを抱いて入学してくる。

だから大半の生徒は、親元から離れる覚悟をして、入学の日を迎える。

それでも全くホームシックにならない訳じゃないが、シャーロットのように、部屋から出られないほどではない。

けれどシャーロットの場合、お試し受験で受かってしまって、まだ心の準備が出来ないまま、入学してしまった。

そりゃホームシックにもなる。

おまけに。

「皆頭が良くて…。授業もレベルが高くて…」

「…」

「私は分からないのに、皆すぐに新しいことを覚えて…。私には、とてもついていけなくて…」

イーニシュフェルト魔導学院新入生あるある、その二だ。

入学したは良いものの、授業のレベルの高さが予想以上で、自信をなくしてしまう。

余程自分に自信のある生徒ならともかく。

「元々自分は、イーニシュフェルト魔導学院に入学出来るほどの能力はない」と思い込んで入学したシャーロットは、イーニシュフェルト魔導学院の「洗礼」を、まともに受けてしまった。

自分にはレベルが高過ぎる。ついていけない。

生活に慣れるだけでも大変なのに、更に学校での授業。

彼女はもう、いっぱいいっぱいなのだ。

成程、それで登校拒否…。

教師にとっては、特に珍しいことではない。

2~3年に一人は、そういう生徒がいる。

だが生徒にとっては、この世の終わりのように辛いことなのだろう。

故郷というものを持たない俺にとっては、いまいちピンと来ない話だ。

「イーニシュフェルト魔導学院なんて、やっぱり私には無理だったんです。私みたいな田舎者が来るところじゃなかったんです…」

すっかり自信をなくしたシャーロットは、目に一杯涙を溜めていた。

「今でさえ授業についていけないのに、これから学年が上がったら、もっとついていけなくなる…。そんな辛いの、無理です。私には耐えられない。私はイーニシュフェルト魔導学院には相応しくない人間だったんです…」

「…そっか」

シャーロットの苦しい胸のうちを、シルナは余さず受け止め。

そして、彼女に言うべき言葉を探した。

「…君が本当にイーニシュフェルト魔導学院に相応しくない生徒なら、そもそも入学出来てないと思うよ」

まずは、ド正論から。