…ようやく、入れてくれたのは良いものの。
彼女の元気のなさと来たら、お化け屋敷から出たばかりのシルナのよう。
これはただ事ではなさそうだ。
まぁ、一週間も授業に出てない時点で、ただ事ではないのだが。
魔導師の卵である彼女達は、体内の保有魔力が高いお陰で、食事をする必要はない。
それでも彼女は、何日も飲まず食わずだったかのように、やつれ果てていた。
「…」
シャーロットはベッドに腰掛けて、押し黙っていた。
部屋の中を、視線だけでさりげなくぐるりと見渡した。
シャーロットのものと思われるデスクの上には、テキストやノート、筆記用具が乱雑に置かれていた。
授業には出ていなくても、勉強だけはしていたようだ。
シルナも、デスクの上のテキストには気づいているに違いないが。
敢えて指摘はせず、その代わりに、シャーロットがベッドの上に置いている、羊のぬいぐるみを目敏く見つけ。
「あーっ…。シャーロットちゃん、羊派だったか~…。惜しかったな~」
大袈裟にそう言った。
惜しいか?
「可愛いね、その羊ちゃん。名前何て言うの?」
「名前…?」
「うん、名前。つけてあげてるの?」
「…」
俯き気味に、こくん、と頷くシャーロット。
「何て名前?」
「…メリーちゃん」
シンプルだが、羊っぽくて良いな。
「へぇ~可愛いなぁ。メリーちゃんって言うんだ。こんにちはメリーちゃん。私シルナ。宜しくね~」
ぬいぐるみに挨拶する学院長。シルナ・エインリー。
「寮にまで連れてきたってことは、シャーロットちゃんとメリーちゃんは、昔からの仲良しなの?」
「…ん」
またも、こくん、と頷く。
「シャーロットちゃんの出身は…確か…北方都市のカリナだったよね」
こくん、と頷くシャーロット。
カリナは、ルーデュニア聖王国北部にある、小さな街だ。
南方都市シャネオンのように栄えてはおらず、どちらかと言うと素朴な…悪く言うと、まぁ、田舎街である。
建物が建ち並ぶ景色より、田園風景の方がよく見られる都市だ。
「遠いところから来たんだね。王都に来るのは、今回が初めて?」
頷くシャーロット。
「カリナとセレーナじゃ、随分環境が違うでしょう?」
「…」
シルナが尋ねると、シャーロットはいきなり核心を突かれたらしく。
泣きそうな顔で、こう訴えた。
「…学院長、先生」
「なぁに?」
「私…家に帰りたいです」
…やはりそうか、と思った。
この時期、一部の新入生がしばしば陥る現象。
所謂…ホームシック、という奴である。
彼女の元気のなさと来たら、お化け屋敷から出たばかりのシルナのよう。
これはただ事ではなさそうだ。
まぁ、一週間も授業に出てない時点で、ただ事ではないのだが。
魔導師の卵である彼女達は、体内の保有魔力が高いお陰で、食事をする必要はない。
それでも彼女は、何日も飲まず食わずだったかのように、やつれ果てていた。
「…」
シャーロットはベッドに腰掛けて、押し黙っていた。
部屋の中を、視線だけでさりげなくぐるりと見渡した。
シャーロットのものと思われるデスクの上には、テキストやノート、筆記用具が乱雑に置かれていた。
授業には出ていなくても、勉強だけはしていたようだ。
シルナも、デスクの上のテキストには気づいているに違いないが。
敢えて指摘はせず、その代わりに、シャーロットがベッドの上に置いている、羊のぬいぐるみを目敏く見つけ。
「あーっ…。シャーロットちゃん、羊派だったか~…。惜しかったな~」
大袈裟にそう言った。
惜しいか?
「可愛いね、その羊ちゃん。名前何て言うの?」
「名前…?」
「うん、名前。つけてあげてるの?」
「…」
俯き気味に、こくん、と頷くシャーロット。
「何て名前?」
「…メリーちゃん」
シンプルだが、羊っぽくて良いな。
「へぇ~可愛いなぁ。メリーちゃんって言うんだ。こんにちはメリーちゃん。私シルナ。宜しくね~」
ぬいぐるみに挨拶する学院長。シルナ・エインリー。
「寮にまで連れてきたってことは、シャーロットちゃんとメリーちゃんは、昔からの仲良しなの?」
「…ん」
またも、こくん、と頷く。
「シャーロットちゃんの出身は…確か…北方都市のカリナだったよね」
こくん、と頷くシャーロット。
カリナは、ルーデュニア聖王国北部にある、小さな街だ。
南方都市シャネオンのように栄えてはおらず、どちらかと言うと素朴な…悪く言うと、まぁ、田舎街である。
建物が建ち並ぶ景色より、田園風景の方がよく見られる都市だ。
「遠いところから来たんだね。王都に来るのは、今回が初めて?」
頷くシャーロット。
「カリナとセレーナじゃ、随分環境が違うでしょう?」
「…」
シルナが尋ねると、シャーロットはいきなり核心を突かれたらしく。
泣きそうな顔で、こう訴えた。
「…学院長、先生」
「なぁに?」
「私…家に帰りたいです」
…やはりそうか、と思った。
この時期、一部の新入生がしばしば陥る現象。
所謂…ホームシック、という奴である。


