まぁ、そりゃそうなるよな。

ベリクリーデや俺をターゲットにしている時点で、お察しと言うものだ。

「私?私が欲しいの?」

紛うことなく当事者なのに、きょとんとしてるベリクリーデ。

お前のことだって。俺とお前のこと。

もっと正確に言うと、前の、俺だけどな。

「私を手に入れたら、何か良いことあるの?」

「あるんですよ、それが」

「ふーん…。何があるの?」

「それが正しい世界だそうです」

「…?」

首を傾げるベリクリーデ。

いまいちピンと来てないようだ。

何となくだが、『カタストロフィ』の目的が分かってきた。

要するに、あいつらは。

「ベリクリーデの中に封印されてる、聖なる神とやらを復活させたい訳だな?」

「仰る通りです」

やっぱりな。

俺とベリクリーデが狙われる理由なんて、それしかない。

「えっ。あの人復活しちゃったら、私また人格なくなるの?」

ようやく気づいたか、ベリクリーデ。

これは一大事なんだぞ。

俺にとってもな。

聖なる神が復活してしまったら、また俺は…いや。

前の俺の中にいる、禍なる神…邪神を、殺そうとするだろう。

聖戦再び、ってところか?

「その通りです」

心を読むなっての。

「いや、分かりやすく説明してくれたもんで」

「だからって、人の心を勝手に読むな」

「済みません。つい癖が」

悪癖って奴だ、それは。

「聖なる神の復活…。本当に実現したら、羽久さんの命が危ないですね」

「前のときも、めっちゃ憎んでたもんな」

危うく殺されかけた。

まぁ、それは前の俺であって、羽久ではないのだけど。

「そうか…。聖なる神の復活…そして、邪神の殺害…。それが目的なんだね」

「…シルナ…」

「分かってる。確かにそれが、『あるべき世界』…なんだろうね」

…そうかもな。

でも、それは神様の都合。

俺達の都合じゃない。

「賢いあなたなら、もうお分かりでしょうけど…。シルナ・エインリー学院長、あなたは『カタストロフィ』から、完全に敵だと認識されています」

「…だろうね」

禍なる者を守り、聖なる神を封印したのだから。

それは『カタストロフィ』が最も嫌うこと。

あるべき世界とやらの為には、禍なる者の殺害と、聖なる神の復活が絶対条件。

それなのに、率先して邪神を滅ぼさなければならない立場のシルナが、他ならぬ邪神…二十音を…守っている。

『カタストロフィ』には、到底許せないことだろう。