稽古場に到着。

そこでは、新米教師のナジュが、実技授業を行っていた。

今日は、炎魔法の実技のようだ。

「はい、それじゃ皆さん。あの魔導人形に向かって、さっき教えた魔法、撃ってみてください」

実技なだけあって、生徒達は、杖を握り締めて真剣な顔。

だが、ナジュ本人は。

「あ、間違って僕を撃っても怒らないので、頑張ってください」

お前、自分が不死身だからって。

生徒達は、ナジュのブラックなジョークに思わず噴き出し。

緊張が、少し解けたようだった。

上手いこと言うもんだな、あいつ。

「成程、ジョークを入れるとウケるのか…」

シルナが何かを学んでる。

お前、存在そのものがジョークみたいなもんだから、ジョークなんて言うまでもないと思うんだけど。

すると、緊張の解けたらしい生徒達が、次々と炎魔法を魔導人形めがけて撃ち込んでいった。

高学年の実技授業なだけに、皆なかなかの腕前。

及第点をあげて良いだろう。

しかし、その中に一人。

緊張からか、元々炎魔法が苦手なのか、他の生徒より若干劣っている女子生徒がいた。

あぁ、あの子知ってる。

俺はシルナと違って、全生徒の顔と名前を覚えている訳ではないが。

高学年にもなると、段々顔と名前が一致する。

あの子は確か、水魔法や氷魔法が得意だったはず。

故に、真逆の炎魔法は、ちょっと苦手なのだろう。

本人も必死なのだが、思ったより威力が出ていなかった。

やや火力不足気味。

筋は悪くないんだが…。

「…」

ナジュも、その生徒に気づいた。

さて、ナジュはどうするのだろう。

シルナなら優しく励まし、イレースなら檄を入れるところだが…。

ナジュはその生徒に歩み寄った。

ナジュが傍に来たことで、怒られるのではないか、と女子生徒がびくっとしているのが見えた。

しかし、ナジュはけろっとして。

「…あれを、魔導人形だと思うからいけないんですよ」

と、言った。