「おう!吐月!俺様の出番か!?」

相変わらず、血気盛んなベルフェゴールである。

「うん。ちょっと出番だから。協力してくれないかな」

「任せろ!俺様の手にかかったら、どんな敵もイチコロだ!」

素晴らしい威勢の良さ。

何とも頼もしい相棒である。

しかし。

「…これが、あなたの召喚魔ですか?」

クュルナさんは、目を凝らして俺の手のひらの上を見つめていた。

…あー…。…えっと…。

まぁ、初対面だとこうなるのは仕方ない。

もう、あれだ。お決まりみたいな感じ。

「はい…。ベルフェゴールって名前で…」

「…随分と…。…可愛らしいですね」

物凄くオブラートに包んでくれて、ありがとうございます。

クュルナさんの、「え?こいつ本当に大丈夫?」みたいな表情よ。

ベルフェゴールの、この小さな体躯を見れば、そう思うのも無理はない。

他でもない俺も、最初はそう思ったものだ。

でも、これで物凄く頼もしい相棒なんだよ。

「ん?何だお前は」

ベルフェゴールが、クュルナさんの存在に気づいた。

「初めまして。私、クュルナと言います」

「ほう。何だ、吐月の恋人か?」

噴き出すかと思った。

「同僚です」

「なんだ、つまらんな」

悪かったね。

「今回、私達は三人で連携して戦うことになるので、ミーティングしておこうかと思いまして」

「ほう。成程、お前も魔導師か。道理で良い魔力を持ってる訳だ」

それはそうだ。

クュルナさんは、俺と同じ、聖魔騎士団魔導部隊の大隊長なのだから。

「しかし、残念だったな。お前の出番はないぞ」

え、ちょベルフェゴール。

「何故なら、俺様と吐月が、どんな敵でも倒してやるからな!」

ちょっと何言ってるの、ベルフェゴール。

いくらなんでも、クュルナさんに失礼過ぎる。

これじゃクュルナさんは、「お前は引っ込んでろ」と言われてるのと同じ。

気分を悪くさせたに違いない。

ごめんなさい、うちの召喚魔、ちょっと傲り気味なところがあって。

これから連携しようっていうのに、こんなんじゃ、連携どころか仲間割れが勃発しかねない。

慌てて謝ろうとしたが。

しかし。

「そうですか。それは頼もしいですね」

…あれ?

「あなたは、攻撃特化の召喚魔なんですね」

「おうよ!どんな敵でもドカーンと!バキーンと倒してみせるぞ!」

「分かりました。では、攻撃力上昇の補助魔法と、防御については私に任せてください」

クュルナさんは、平然と言った。

少しも嫌そうな顔はしてない。

あれ…?気を悪くした…訳ではない?