神殺しのクロノスタシス2

「ごめんなさい…」

自分が悪い訳でもないのに、ニーナは泣きそうになりながら謝った。

「ニーナちゃんは悪くないよ。よく話してくれたね、ありがとう。心配しなくて大丈夫だからね。私の方から、シャーロットちゃんとよく話してみるよ」

シルナは、ニーナの肩に手を置いて、優しくそう言った。

「あの…学院長先生」

「うん?」

「シャーロットちゃん、サボってる訳じゃないんです。聞いた訳じゃないけど、それは分かるんです」

「…ニーナちゃん…」

ニーナは、訴えかけるように言った。

「毎朝、本当に辛そうで…。夜中に、ベッドの中で泣いてることもあって…」

「…」

「私、何て声をかけたら良いのか分からなくて…」

…彼女のも彼女なりに、ルームメイトのことで悩んでたんだな。

気づかなくて、悪いことをした。

「…分かったよ。ニーナちゃん」

シルナは、努めて優しく言った。

「辛かったね。気づいてあげられなくて、ごめんね」

「先生…。シャーロットちゃん…大丈夫でしょうか?」

この期に及んで、心配するのはルームメイトのことか。

「大丈夫だよ」

シルナは、きっぱりと答えた。

シルナが大丈夫だと言うのだから、心配は要らない。

「後のことは私に任せて。私がシャーロットちゃんと話してみるからね」

「でも…。シャーロットちゃん、誰にも会いたくないって…」

「大丈夫。上手く説得してみせるから」

自信満々に答えるも、ニーナはまだ不安そうな表情。

そんなニーナに、俺はこうフォローを入れた。

「心配するな。胡散臭い話術で他人を籠絡するのは、シルナの特技だから」

「ちょっと羽久!詐欺師みたいな言い方やめて!」

似たようなもんだろ。

「とにかく、後のことは大人に任せておけば良いから。もう心配しなくて良い」

俺はそう言って、ニーナを宥めた。

「先生…」

「大丈夫。伊達にイーニシュフェルトの教師やってないよ」

シルナも、俺もな。

「…シャーロットちゃんのこと、助けてあげてください。お願いします…」

ニーナは、ぺこりと頭を下げた。

…そんなこと。

「言われるまでもない」

自分の生徒が、泣いて困ってるのに無視するなんて、他の誰が許しても、シルナだけは絶対に許さないからな。