神殺しのクロノスタシス2

「何?ニーナちゃん」

「…あの…」

「…良いよ、何でも言って。何があっても、私が絶対、何とかしてあげるから」

…シルナが言うと、説得力が違うな。

するとニーナは、泣きそうな顔で訴えた。

「聞いたんです、私。学校行かなくなって三日目に。『どうして行かないの?何かあったの?』って」

「うん」

「そうしたらシャーロットちゃん…。学校、行きたくないって…。学校行くのが怖いって…」

…怖い…か。

じゃあ、やっぱりシャーロット・エフィラムは…俺達の予想通り…。

「怖い?」

「はい、そう言うんです…。誰にも言わないでって。クラスメイトにも、先生にも…」

…そうか。

口止めされていたから、わざと知らない振りを…。

「ごめんなさい、私嘘ついて…」

「良いんだよ。ごめんね、言いたくないことを無理に言わせて。シャーロットちゃんに責められたら、『学院長に無理矢理言わされた』って言って良いから」

そうだ。ニーナが悪い訳じゃない。

俺達が無理に聞き出そうとしたのが悪い。

むしろニーナはルームメイトの意思を尊重しようと、知らない振りをしようとしてくれたのだ。

彼女は何も悪くない。

「学校行くのが怖いって、そう言ってたんだね?」

「はい…」

「具体的に何が怖いかは聞いたかな?クラスメイトに馴染めない子がいるとか、怖い先生がいるとか…」

クラスメイトはともかく、怖い先生はないだろ。

イーニシュフェルト魔導学院の教師は、基本的にほぼシルナ(の分身)だ。

シルナは根がこんなだから、どの分身も、生徒が登校拒否を起こすほど怖くはない。

むしろ優し過ぎて、「イーニシュフェルトの教師は皆親切だ」と評判になるほど。

優しいと言うか…甘いと言うか…。

如何せん本体がこんなだから、怖い教師を作ろうとしても、作れないのだ。

強いて言うならイレースは怖いかもしれないが、一年生はまだ、イレースの授業を受ける機会はほとんどないはずだし…。

前述の通り、俺が担当する時魔法の授業は、一年生には開講されていないし…。

クラスメイトか?クラスメイトに、馴染めない奴がいるとか?

それとも…。

「分かりません…。聞いたんですけど、答えてくれなくて…」

「…そう」

…そこまで打ち明けるまで、まだお互い心を許している訳ではない、か。

無理もない。

学校に行くのが怖いのだという、その一言をルームメイトに打ち明けるだけでも、大変な勇気が必要だっただろうから。