「俺達は仲間だ。同じ聖魔騎士団魔導部隊の大隊長だ。だから、一人で背負う必要はない」

「…無闇さん…」

…まさか、そんなことを言われるとは。

何だか肩の力が抜けるような…。

…一体どういう意味なのか。

言葉の通りに受け取って良いものか。

「…優しいねぇ、君は」

ふわり、と。

無闇さんの背中から、美しい女性が舞い降りてきた。

普通の人なら、度肝を抜かしただろう。

でも、無闇さんにとっては…そして、事情を知ってる僕にとっても…驚くべきことではなかった。

「えっと…。月読(つくよみ)さん…でしたね」

「そうだよ」

月読さんは僕に振り返り、笑顔で答えた。

何を隠そう。

無闇さんの持つ『死火』という魔導書の化身。

無闇さんと契約している、冥界の魔物。

この人が、無闇さんの相棒なのだ。

「君、探索魔法が得意なんだってね?」

「は、はい」

無闇さんと話すことも少ないのに、月読さんと話すなんて、初めてだ。

「凄いねぇ。私、見てみたい」

み、見てみたい?

探索魔法を?

「どうやって探すの?ねぇ。どうやって探すの?」

「え、えっと」

「月読、あまりプレッシャーを与えるな」

無闇さんに諌められ、月読さんは楽しげに笑った。

…実質俺達、二人一組じゃなくて、三人一組なんだよな。

「出来る限りのことをしてくれ。その上で、『敵』が攻撃してきたなら、俺達が何とかする」

と、無闇さん。

俺達とは、つまり無闇さんと月読さんのことだ。

「俺には、探索魔法は使えない。だから、お前のサポートをする。お前を守る。俺に出来ることなら、何でも言ってくれ」

「は、はい…」

何でも…何でも…か。

「じゃあ、あの…差し出がましいんですが」

「うん?」

「ついてきてもらえませんか?行かなきゃならないところがあって…」

「分かった。同行しよう」

何となく、近寄り難いと思っていた無闇さんとの、距離が。

少し、短くなったような気がした。