神殺しのクロノスタシス2

…まぁ。

聞かれて嬉しい話じゃないよな。

「…私も、よく知らないんです」

ニーナは、必死に俺達から目を逸らし、そう答えた。

「入学してから初めて会った仲ですし…。同じ部屋にはいますけど、まだそんなに親しい訳じゃ…」

「…」

…同い年とはいえ、お互い初対面同士、それに出身地もそれぞれ違う。

おまけに、13歳という、ただでさえ過敏で繊細な年頃の少女達。

そりゃお互い警戒し合うだろうし、出会ったその日から仲良し同士、なんて無理だろう。

よっぽど気が合う性格同士なら、初日から仲良く出来るかもしれないが。

中には、なかなか自分から話しかけるのは難しい、内気な生徒だっているはずだ。

ルームメイトだからって、必ずしも仲良くなれる訳じゃない。

おまけに、彼らはこの春、初めて親元を離れて、寮生活を始めたのだ。

新しい学校、新しい環境…身の回りにあるものが急激に変わり、それに適応するだけでも大変なはずだ。

まず自分が環境に適応することだけで精一杯で、他人の…ルームメイトのことなんて、気にかけてる余裕はない。

それは分かる。

こちとら、毎年新入生を迎えているのだ。

彼らが新しい学生生活に馴染んでいくには、短くない時間がかかることは知ってる。

だからこそ、長い目で見ていくつもりだったのだが…。

「そうだね。じゃあ…体調悪そうだなとか、元気がないなぁとか、それくらいなら分からない?」

「…体調…は、どうなんでしょう…。あまり、顔を合わせることがなくて…」

「同じ部屋で寝起きしてるけど、顔を合わせることはない?」

「…はい…」

…成程。

余程、言いたくないと見える。

俺でも察しているくらいなのだから、シルナが気づかない訳がない。

「…そっか、分かったよ。ありがとうね、ニーナちゃん」

「…」

ニーナが本当のことを吐くまで、問い詰めても良い。

だがシルナの性格的に、絶対にそれはしないはず。

案の定。

「ごめんね、わざわざ来てもらって。また何か分かったら、教えてくれると嬉しいな」

「…はい…」

ニーナは、おずおずとソファから立ち上がった。

そして、相変わらずにこにことしているシルナの顔を見て。

思い詰めたような…切なそうな表情を見せた。

…吐き出して良いんだよ。こいつは、何でも、どんなことでも受け止めてやるんだから。

思わず、そう言いそうになった。

しかし。

「…あの、学院長先生」

「うん?」

ニーナは自分から、堰を切ったように話し出した。