神殺しのクロノスタシス2

結局。

チョコケーキは、シルナに譲ってやった。

武士の情けって奴だ。

生徒に遠慮させて食うチョコケーキは美味いか。

ま、俺は何のケーキでも良いし。

「あ~。美味しいねぇケーキ。ねぇニーナちゃん」

「は、はい…」

「私このお店お気に入りでねぇ。よく行くんだよ。二日に一回は行ってる」

行き過ぎだろ。

常連客か。

「ケーキが有名なお店なんだけど、意外にマカロンが美味しいんだよ。これ、豆知識ね」

今年一番要らない豆知識をありがとう。

「は、はぁ…」

ニーナは、戸惑いながらフォークを動かしていた。

が、その手はぎこちない。

無理もないだろう。

いきなり学院長室に呼び出されて、何が嬉しくて、学院長と教師と三人で、ケーキを囲まなければならないのか。

きっと、あのチーズケーキは、少しも味わえてないに違いない。

…早く解放してあげるべきだな。

「シルナ。チョコケーキは良いから」

「へ?」

へ?じゃねぇよ。

「本題に入れよ」

「本題…?ケーキ?」

「ボケてんのか、寝ボケてんのかどっちだ!」

「あ痛!」

後頭部をしばいてやった。

「いつつ…。全く、乱暴なんだから羽久は…」

「全く、ボケてるんだからシルナは…」

「ちゃんと覚えてるよ」

ならさっさと言え。

ケーキ食べるのが目的じゃないんだぞ。

「えーと…。ニーナちゃん」

「は、はい」

「君を呼んだのは、他でもない…君のルームメイトの、シャーロットちゃんのことについてなんだけど」

「…」

シャーロットの名前が出るなり、ニーナは顔を曇らせた。

…明らかに、何かを隠したがってる様子だ。

「シャーロットちゃん、ここ最近、授業に出てないんだよ。君も…そのことは知ってるよね?」

「…はい」

これは認めざるを得ない。

同じ部屋で寝起きしているのだから。知りませんとは言えない。

「一体どうしたのかなぁと思って。ニーナちゃん、何か知ってる?」

「…」

ニーナは、無言で俯いてしまったが。

その表情から、残念ながらあまり良くないことを隠しているのは事実のようだ。