神殺しのクロノスタシス2

そうそうたる顔触れである。

聖魔騎士団長であるアトラス以下。

聖魔騎士団副団長であるシュニィ。

そして、聖魔騎士団魔導部隊大隊長。

吐月。

クュルナ。

キュレム。

ルイーシュ。

ジュリス。

無闇。

ベリクリーデ。

エリュティア。

そして、イーニシュフェルト魔導学院から、羽久・グラスフィア。つまりは俺なのだが。

学院長であるシルナ。

それから、イレース。

学院で匿っていた食客、天音。

以上が、ここに集まっている人間の名前だ。

全員が、緊張の面持ちだった。

まぁ、ルイーシュとベリクリーデ辺りは、相変わらず呑気な顔をしていたけど。

ルイーシュはともかく、ベリクリーデは一応当事者なので、真面目に聞いて欲しいのだが。

「…ごめんね、皆集まってもらって」

まず、シルナが皆に向かって言った。

「シュニィちゃんも。身体、大丈夫?辛かったら言ってね」

「はい、大丈夫です」

忘れてはいけない。シュニィは、現在妊婦なのである。

シュニィのお腹は、妊婦のそれと分かるほどに膨らんでいた。

安定期に入って、悪阻もほとんど収まったということで、無理を言って今回は出てきてもらった。

とはいえ、彼女に何かしらの役目を押し付けるつもりではない。

ただ、立場上顔を出してもらっただけだ。

「…今日集まってもらった理由は…昨日、既に連絡した通りなんだけど…」

シルナは、陰鬱な顔で切り出した。

楽しい話じゃないからな。

シルナにとっては、特に。

「私のイーニシュフェルト魔導学院に、『殺戮の堕天使』というスパイが潜入していた。彼は自分が、『禁忌の黒魔導書』の封印を解いたと自供した」

「…」

「彼は生徒を人質に取って、ベリクリーデちゃんを差し出すように要求した」

自分の名前が出たというのに、ベリクリーデは表情一つ変えず。

相変わらず、ぽやんとしていた。

おい、危機感。危機感。

「結果として、彼は人質の命を奪うこともなく、逃げていったけれど…。その行方は、まだ分かっていない」

多分、自分の本当のねぐらに戻ったのだろう。

それが何処なのかは分からないけど。

とにかく、シルナのこのざっくりした説明が、昨日起きた出来事だ。