神殺しのクロノスタシス2

シルナが一番心配しているのは、そこだ。

生徒の命より、自分の命よりも。

「前の」俺の中にいる…邪神。

それを守るのが、今のシルナの生きる理由…。

「…君は殺させないよ、私は」

「…」

「絶対に殺させない。君のことは、必ず私が守る…」

…そうやって。

また一人で抱え込んじゃってさ。

お前の悪いところだよ。

「…聖魔騎士団に、協力を求めよう」

だから俺は、そう言った。

シルナを一人にしない為に。

「…!でも、彼らは関係ない。こんなことになったのは、そもそも私が間違った選択をしたせいで…」

「うるさい。そうやってまたお前は、全部一人で抱え込もうとして」

「…それは…」

「ちょっとは頼れよ。そもそも『禁忌の黒魔導書』の調査については、聖魔騎士団から依頼されたんだ。必要とあれば、頼むのは当然だ」

むしろ俺達は被害者だろ。

危うく生徒の命が失われるところだった。

「羽久…」

「一人で抱えるな。お前には仲間がいるだろ」

教え子と言う名の、仲間が。

ナジュ・アンブローシアの素性が分からない以上、もう俺達二人だけの手には負えない。

おまけにあいつは、何処かしらの組織に所属しているのだ。

その組織が、何名で構成されているのか、どれほどの戦力を持っているのかは分からない。

向こうが複数人で来るなら、こちらも同じことをするまでだ。

聖魔騎士団と協力して、『殺戮の堕天使』を捕まえる。

そして、奴らの目的とやらをぶっ潰す。

その為に、聖魔騎士団の協力は不可欠だ。

形振り構ってる暇はない。

四の五の言ってる場合でもない。

「…分かった」

シルナは、少し微笑んで頷いた。

「皆を集めて、これからどうするか話し合おう」

「あぁ」

それで良い。

俺達が揃えば、堕天使だろうと神だろうと、敵う相手がいるものか。