「…?」

突然立ち上がった僕に、クラスメイトは皆ぽかんとして、こちらを見つめていた。

あぁ、そうだね。

納得行かないよね。意味分からないよね。

こいつ、いきなり何言い出してんの?って思うよね。

だから、僕はもう一度言う。

「全員立って、両手を上げてください」

そして、大事な一言を付け加える。

「逆らう者は、容赦なく殺します」

僕は杖を手に取ってちらつかせた。

さぁ、これでどうだ。

「な…何言ってるんだ?ナジュ…」

僕のルームメイトにして、一応友達…の、役をしていたユイト・ランドルフが、声をあげた。

「言葉の通りです。早く従ってください」

「お、おい。突然変なこと言うなよ。冗談はやめろって…」

冗談、か。

冗談、冗談ね。

この茶番が、この人生が冗談であったなら、どんなにか幸せであったことだろう。

すると。

教壇に立っていた「教師」が、不安そうな顔をして僕を宥めにかかった。

「いきなりどうしたんですか?アンブローシア君。何が…」

「…あぁ、そうでした」

僕は、「教師」に向かって杖を向けた。

さてと。もう力を隠す必要はないんだっけ。

僕は、得意の風魔法を使った。

風で出来た鋭い刃…風刃が、「教師」の身体を真っ二つに切り裂いた。

教室内に、悲鳴があがった。

「…そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

だって、ほら。見てみろ。

僕の風魔法で切り裂かれた「教師」は、風船が割れるみたいに弾けて、そして消えた。

所詮これは、人ではない。

ただの、シルナ・エインリーの分身の一つに過ぎないのだから。

「これで分かりました?」

僕は、偽者の分身が立っていた教壇の上に立った。

「…僕、あまり気が長い方じゃないので、警告はこれで最後にしますね」

そう言って、僕は顔面蒼白のクラスメイト達を見渡し。

笑顔で、再度繰り返した。

「全員立って、両手を上げてください。逆らえば…殺します」