神殺しのクロノスタシス2

「七不思議だよ!?怖いじゃないか!」

「良い歳して、幽霊の何が怖いんですか」

「この噂が広まって、『イーニシュフェルト魔導学院にはお化けが出るから、他の学校にしよう』って思って、受験生が減るかもしれないんだよ!大変なことだよ!」

そんな理由で志望校変える人、いる?

多分いないよ。

「馬鹿馬鹿しい。学校の七不思議なんて、どの学校にでもあります」

あくまで、イレースはまともに取り合わない。

「暇な生徒が、注目を浴びたいが為に下らないことを考えてるだけです」

一刀両断だな。

まぁ、七不思議の始まりなんて、そんなもんだ。

「ちなみに、ラミッドフルス魔導学院にも、七不思議とかあった?」

「ありましたよ。あまりに下らないので、私も詳しくは聞いていませんが」

鬼教官だもんな。

しかし、シルナは納得が行かないらしく。

「やだよ怖いよ!はっきりしないのが一番怖いよ!」

「じゃあ、確かめに行けば良いだろ」

「羽久もついてきてくれるよね?」

は?

「何で俺が、そんな下らない夜回りに付き合わなきゃならないんだ」

一人で行けよ。

「一人だったら怖いんだもん!」

「…」

「お願い羽久!ついてきて!イレースちゃんも!お菓子あげるから、ねっ!」

「…」

…お菓子に釣られて、深夜の校舎を徘徊する奴がいると思ってるのだろうか。

俺とイレースは、間違いなくこのとき、同じことを考えていたに違いない。

「…私はお断りしますよ。明日の授業の準備がありますから」

「あぁっ!イレースちゃん!」

「では失礼」

イレース、さっさと逃走。

偉いなぁあいつは…。

で、残るは。

「羽久お願いだよ~!ついてきてよ~!」

「馬鹿だな…。怖いなら行くなよ…」

どうせ噂なんだから、噂のままで良いじゃないか。

何故、わざわざ確かめる必要がある。

「だって、はっきりしなかったら怖いじゃん!本当にそんなお化けがいるのなら、成仏してもらわなきゃいけないし!」

「…」

「お願いだよ~。一人だと怖いんだよ~…」

涙目で懇願する学院長(おっさん)。

…全く救いようがないな。

「…分かったよ。行くよ」

「…!ありがとう羽久!」

そう答える以外に、俺に選択肢があっただろうか。

結局は、巻き込まれる運命なのだ。