よーいどん、でスタートし。

僕を含めた他四人は、お題の紙が入ったボックスに手を突っ込んだ。

面倒臭い注文されませんように。

箱の中から一枚を選んで、引っ張り出す。

よし。これにしよう。

根拠はないが、これが良いような気がした。

とりあえず、開けてみよう。

ぺりっ、と開けて中を見ると。

『ハゲたおじさんと一緒にゴールする』

「…」

…なぁ。

これ、考えたの誰?

僕はどうすれば良いんだ。

観客のテントを回って、「お客様の中に、ハゲた方はいらっしゃいませんか!」って言えば良いのか。

誰が名乗り出るのか。

僕はもしかして、最高難易度のお題を引いてしまったのでは?

チェンジで、と言いたいところだったが。

残念ながら、一度開いてしまったら、お題を変えることは出来ない。

おのれ。

仕方ない。テントを回って、さりげなく男性陣の後頭部を眺め、これという人に協力してもらおう。

勿論、お題の紙は見せずに、な。

こんなの見せられたら、誰だって怒るに決まってる。

「俺の何処がハゲてんだ!」とか言って。

何処がって、頭だよ頭。

「…あ」

僕は、ふととある名案を思い付いた。

審査員は、羽久・グラスフィア。

なら、行けるんじゃないか?

多少危険…ではあるものの。

運動会で、誰よりもハイになっている今なら。

こうして、すぐ悪巧みを思い付いてしまうのが、僕の悪い癖だ。

そして、その悪巧みを決行せずにはいられないのも。

「…ちょっと、やってみましょうか」

運が良ければ、僕の欲しい何かが手に入るかもしれない。