スカーレット号のトンファーを、黄チームの魔導人形は、素早い動きでするりと避けた。

神回避。

「何っ…!?」

これには、赤チームリーダーも驚愕。

スカーレット号は、何度もトンファーを振り上げては、黄チームの人形を狙った。

しかし、その攻撃が当たることはなかった。

すんでのところで、全部避けられてしまう。

あの機敏な動きよ。

黄チームはどうやら、スピード重視の魔導人形らしいな。

スピード重視か。

赤チームには、その発想はなかったな。

スカーレット号のトンファーは確かに強いし、当たれば一撃で倒せる。

だが、それは当たれば、の話である。

そんなロマン技をメイン武器にしたんじゃあ、機敏な黄チームにしてみれば、良いカモも同然。

しかも。

黄チームに苦戦している間に、青チームも参戦してきた。

あーあ。

青チームの人形に武器はないが。

しかし彼らには、あのゴツい盾がある。

防御だけに使うのではなく、盾を鈍器代わりに襲ってきた。

ある意味、バランス派だな。

こうしてスカーレット号は、青チームと黄チーム、両方に挟まれることになった。

三巴の合戦で、左右に挟まれるのは最悪の状況だ。

「くっ…!頑張れ!スカーレット号!」

赤チームの、必死の応援も虚しく。

防御する術がないスカーレット号は、青チームのタックルと、黄チームの剣を同時に浴び。

脆くも儚く、その場に倒れて動かなくなった。

「あぁっ…」

赤チームのテントに、落胆が広がった。

あーあ。

負けてやんの。

しかも、一番に倒された。最下位じゃないか。

こんなことになるんじゃないか、と思ってたよ。

いくら攻撃だけ強くてもな。

当たらなければ、ただの飾りだから。

憐れなり、さらばスカーレット号。

僕はお前に、全く愛着もないが。

スカーレット号に感情移入していた数名は、スカーレット号の敗北に涙を滲ませていた。

おいおい。ただの人形だぞ。

もうガラクタなのだから、バラバラにして捨てれば良い。

さて、スカーレット号は負け、赤チームの敗北は決まったので。

あとは、残る二チームの一騎討ちを、観戦するだけ。

どちらのハリボテが勝利するやら。