神殺しのクロノスタシス2

名前も知らない魔導師が、目を覚ましたのは。

授業が無事に終わり、生徒達が皆学生寮に帰った頃だった。

授業が終わるなり、イレースが医務室にやって来た。

イレースはあくまで、聖魔騎士団に通報するべきだと言い張ったが。

勿論、それを聞くシルナではない。

仕方なくイレースも諦め、いつ彼が目を覚ましても良いように、医務室に待機していた。

そして。

「…う…」

苦しそうに目を閉じていた彼が、僅かに身悶えした。

「大丈夫?」

「…」

薄く目を開け、ゆっくりと首を動かして、こちらを見た。

…どうやら、意識を取り戻したようだが。

「お前、何者だ?」

「何の為に、学院に忍び込んだんです」

俺とイレースは、ほぼ同時に畳み掛けた。

「ちょっと、二人共…。まだ目を覚ましたばかりなのに」

「何悠長なこと言ってんだ」

こいつは、シルナに会いに来たんだろう?

何をしたくて、シルナに会いたかったのか知らないが。

もしこいつが、シルナの首を狙っているのだとしたら。

俺は、敵に塩を送るつもりはないぞ。

弱ってる今のうちに、即刻息の根を止める。

イレースも、そのつもりだろう。

卑怯者と言いたければ、好きに言え。

それなのに、シルナは。

「はいはい、落ち着いて。まず名前を聞こうよ。君は誰?何て名前なの?」

お前、こいつが自分の命を狙って来た刺客かもしれないってこと、分かってるか?

それとも、今のこいつがいくら暴れても、絶対勝てると確信してるからこその余裕か?

いや、シルナのことだ。

自分の命を狙いに来たのだとしても、まずは平和的に話し合おうとするに決まってる。

すると。

「…天音(あまね)…」

ぽつりと、刺客(?)が呟いた。

…天音?

「天音?それが君の名前?」

「…はい」

…どうやら。

起き抜けに襲い掛かってくる、ということはなさそうだ。