愛しい君へ


そんなある日の8ヵ月健診の時だった。
いつも付き添いで病院まで送り迎えしてくれていた匡が、急遽大事な仕事が入ってしまったのだ。

「ひより、本当にごめん!行く時は送って行けるんだけどさぁ。」
「大丈夫だよ。帰りは、1人で帰って来れるから。」
「本当にごめんな!帰りも出来るだけ早く帰れるようにするから。」
「そんなに気にしないで?仕事なんだから仕方ないじゃない?」

匡は病院まで車で送ってくれると「帰り、気を付けて帰れよ?」と言い、最後まで「ごめんな!」と謝り続けていた。

「大丈夫、匡は心配しすぎ。」

わたしはそう言って、仕事へ向かう匡を見送った。

そして、8ヵ月健診は何の問題もなく終わった。

どうやって帰ろう。
天気も良いし、散歩がてらバス停まで歩こうかな。

そう思いながら、病院を出た時だった。

後ろから、ドンッと誰かに背中を押され、わたしは前に転び、自分の膝にお腹をぶつけた。
その瞬間、お腹に激しい痛みを感じた。

わたしは地面に倒れ込み、一瞬ではあるが顔を上げると、走って逃げて行く男性の後ろ姿を見た。

わたしは咄嗟にそれが玲司さんだと気付いた。

すると、健診を終えて病院から出てきたご夫婦が、わたしが倒れていることに気付き、慌てて看護士たちを呼びに行ってくれた。

こんなとこまで来て、仕返しのつもりかな。

わたしはお腹の痛みに耐え、運ばれながらそう思った。