愛しい君へ


「じゃあ、行ってくるからね。」
「はい、いってらっしゃい。」

玲司さんを見送ると、わたしは長い廊下をとぼとぼ歩き、リビングのソファーに腰を掛けた。

わたしの人生って、何なんだろう。
誰のもの?わたしのものじゃないの?
わたしに選択肢はない。

ただ、玲司さんの言う事だけきいて、やり甲斐があった仕事まで奪われてしまった。

唯一わたしに残っているのは、この子だけ。

そう思いながら、わたしはお腹を抱き締めた。

この子だけは、奪われたくない。
わたしが守らないと。


わたしはそれから4日間、点滴に通い、その数日後に健診を受けに行った。

前回同様、膣からのエコーである経膣エコーで赤ちゃんの状態を診てもらう。

「うん、心拍も確認出来るし、元気に育っていますよ。」

先生からの言葉に安心するわたし。

先生は今日も何枚かエコー写真を撮ってくれた。
そのエコー写真には、きちんと頭と身体が分かれ、手足も確認出来る人間らしくなってきた赤ちゃんの姿が写っていた。

わたしは無事に育ってくれていることに感謝しながら、生命の神秘に感動していた。

「そろそろ母子手帳もらってきてね。保健センターに行けば貰えるから。」

先生にそう言われ、わたしはその帰りに早速保健センターに寄った。

「おめでとうございます。」

そう言いながら、保健師さんが母子手帳を差し出してくれる。
その母子手帳と共にマタニティマークも貰い、わたしは嬉しくて、すぐにマタニティマークをバッグにつけた。