このことを、わたしはまだ玲司さんに話さなかった。
妊娠したと言えば、玲司さんは何と言うだろうか。
喜んでくれるだろうか。
わたしは、最初は実感が湧かず信じられなかったが、次第に喜びが込み上げてきた。
そして、お腹が愛おしく感じるようになった。
しかし、喜びとは裏腹に体調はどんどんと悪くなっていった。
これが悪阻ってやつかぁ。
眠気に胃のムカつき、吐き気、目眩。
それを隠しながら過ごすのは、とてもツラかった。
そして、わたしのお腹に一つの命があることを知らない玲司さんは、当然毎晩わたしを求めてくる。
わたしはお腹を庇うようにしながら、産婦人科受診日まで耐えたのだった。
そして、待ちに待った産婦人科受診日。
わたしはこの日、仕事を早退し、午後に診察を受けに行った。
院内は、産科と婦人科に分かれており、わたしは婦人科の方に呼ばれた。
「藤崎ひよりさん。診察室3番へどうぞ。」
看護士さんに呼ばれ、3番の診察室へ向かう。
3番の診察室前に着くと、看護士さんがドアを開けてくれ「どうぞ。」と優しい口調で中へ促してくれた。
中には、30代後半くらいの男性の医師が椅子に座っていた。



