匡の顔を見て、わたしは自分の顔が自然と綻ぶのが分かった。
やっぱり匡の姿を見ると、安心する。
スーツ姿の匡、カッコいいなぁ。
匡はそんなわたしに微かに微笑んで見せたが、その表情はどこか切なかった。
「お待たせして申し訳ありませんでした。」
玲司さんがそう言うと、五藤のおじさんとおばさんは慌てて椅子から立ち上がり、「いえいえ!とんでもない!」と緊張している様子だった。
匡だけは立ち上がらず、座ったまま玲司さんのことを睨み付けているように見えた。
「どうぞ、お掛けになってください。うちの会長は、もう少ししたら到着すると思いますので。」
そう言い、五藤家と対面に席につく玲司さん。
玲司さんに続き、わたしも玲司さんの隣の席についた。
わたしの目の前には、匡が座っていた。
久しぶりの対面に嬉しさと気恥ずかしさから、わたしたちは目が合うとひっそりと笑い合った。
そして、それからすぐに会長が到着し、会食が始まる。
ここでわたしは初めて気付いたのだが、玲司さんには母親が居なかった。
どうやら、5年前に病気で亡くなったらしい。
「こんな立派なレストランにお招きいただき、どうもありがとうございます。わたしたち庶民がなかなか来られる場所ではないので、緊張しちゃって。」
そう言いながら、ハンカチで額の汗を拭う五藤のおばさん。
玲司さんは「いえいえ、ひよりさんから娘同然に大切にしていただいたと聞いておりましたので、これくらいは当然です。」と余裕な表情で言った。



