きみは永遠の小悪魔【完】

「だってチカ、そればっか」

千景くんに冷たく突っ返されても、奏太くんは私みたいにしゅんとならない。

“いつものこと”のように慣れっこみたいで、それ以上は何も続けずに私たちへ無垢な視線を預けた。


「二人はどうします?一緒に頼みますか?」

「食べたいの決まった?」

「まだ…」


彗に聞かれてふるふる頭を振った。

「じゃあ、後でお願いします」と、奏太くんが店員さんに伝えてくれたので「ありがとう」と、私は彗の後ろから前屈みに体を持ち上げた。


「少々お待ちください」

彗の穏やかな瞳に見つめられる。

「1分いただけますか?すぐ決めちゃうね」

「どっかの3分待つアニメみたいな意地悪しませんよ。ゆっくり悩んでください」

「はあい」

「彗は何にするの?」

「さあ、なんでしょう」


突然の問題に分厚いメニュー表を捲って「ハンバーグ?」と指差す。「惜しい」と言われたので、ハンバーグの下にあるグラタンを挙げてみる。

悪戯っぽく笑われる。また違うの。次のページに指をかけた。


「オムライス?(いつまで経っても当たんないや)」

「ヒント。店の外から良い匂いがしました」

瞬間、ぴこんっと閃いた。

「ビーフシチューだ」

「正解」


ふ、と彗が柔らかく笑った。私の心はゆっくり絆されて、じんわり熱を孕み温まってく。

「私はね……」言い続ける隙間に、千景くんの綺麗なEラインが私に向いた。椅子に深く背凭れて、仰け反った体勢で唇が動いた。