きみは永遠の小悪魔【完】

「あー、やっぱり蹴り入れとけばよかった」

一件落着(?)した後、彗の腕の中で幸せ摂取をしていると、頭上から物騒すぎる言葉が転がってきたものだから、甘々に溶けた意識が飛んでいった。私は彗に口を挟む。


「ダメ!暴力も痛いのも禁止です」

「誰かさんが警戒心ゼロだからでしょ」

「む」


指摘されてしまいました。そして、正論でもあります。

言い返すこともできないまま、両頬にぷくっと可愛くない不満が溜まる。

「“む”じゃありません」彗が膨らんだ頬を優しく突いた。空気が抜けてく中「“む”じゃなくて“ん”なの!」と、せめてもの反抗を企てるが、返って駄々を捏ねる子どもであることに気づいたの。


「どっちも変わんないだろ」


甘ったるくて低い声色が耳を撫でる。


「ふみ。拗ねんなって」


二人きりのとき、たまに敬語じゃなくなるのも、さん付けを外すのも、全部ずるいなぁ。私の心が簡単に落っこちる。

と、手の中で眠っていたスマホが、通知音を届ける。二人して視線を下げた先、リマインダーに書き残した文字がディスプレイに浮かび上がって。

見られてはいけないものを、見られてしまいました。

それは、彗のお迎えを待ってる間、鼻歌交じりにご機嫌に打った、心のメモならぬ『ふみの秘密メモ』である。

内容は《彗にコーヒーを買いに行く》

隣で肩がくっつく。


「行きますか」

「え??」


彗が手を繋いで歩き始めた。