きみは永遠の小悪魔【完】

「ん、」と短い言葉が滑り、ぱちりと目を開けたの。

私も、彗が私を想ってくれるのと同じくらい、彗のことが大事。

スーツの裾に指先を這わせ、合図を送るみたいに静かに握る。彗は視線を合わせるように屈んだ。一度見つめて、私の方からゆっくり視線を外す。

美麗な顔にのる艶っぽい表情が私を追いかけて覗き込んだ。


「ご褒美は?ちゃんと言いつけ守ったでしょう」


彗は頭を軽く下げた。


「いつも守ってくれてありがとうございます」

「ん」


前髪の少し上辺りを撫でた。

彗の嬉しそうな柔らかな声に、胸の奥がきゅっと高鳴る。「ふふ(子どもみたい)」と小さな笑い声が溢れたとき、彗が私の手を引いた。


「こっちも」

ぐっと近づいた距離に顔を持ち上げて慌てふためく。

「へ?い、今!?」


キスをするのかと思って。
急いで瞼を閉じたのに、何も降ってこなくてすぐに瞬きをしたの。

わわっ。わ〜〜っ。


「しませんよ」

右の頬を軽く引っ張られた。

「むー…」


唇を結んでぽかぽかと彗の胸を叩いた。

くす、と口角を緩める彗にこころが甘い熱を孕んでいく。彼につられて私の口元も淡く微笑んだ。


お気に入りのコートも、ぐるぐる巻きのマフラーも、寂しいれけどそろそろ要らなくなってきた。暖かい春が迎えにやって来る。

私たちは付き合って2ヶ月経ちました———…