きみは永遠の小悪魔【完】

一週間前、疲れ気味な彗の手をソファまで引いて「休憩してください」と、大学に行くまでお休みしてもらったんだっけ。その間、私は彼の邪魔にならないようにって、バームクーヘンをハムスターみたいに口いっぱい溜めて頬張ってたの。

次の日は、講義終わりの図書館で彗に勉強を見てもらってたはずが、気がついたらぐっすり寝ちゃって。一昨日は一日3回のキスに溺れて、慣れない息継ぎに必死だった私は、車内でとろんと蕩けていた。

“いつの間に”の心当たり、ありまくりです。

ぽかんと唇を半開きにする。彗は空いた左指で私の目元を拭った。


「ねえ、ふみさん」

低く掠れた音が頭を撫でる。

「なあに」

聞き返した。彗と視線が交わる。

「お願いだから、無茶しないでください。一人で追い払えるなんて思わないで」

「…………」

「ふみさんは、世間知らずでいつも危なっかしいし、方向音痴だし、変に強気なところもあって心配なんですよ」

温度の低めな声が私の耳先を掠める。

「俺からふみさんを攫うやつは嫌いです。相手が誰であっても、どんな手を使ってでも奪い返します」

「こっ……こわっ、い」

涙が一瞬で引っ込むの。

「じゃあ、殴って取り戻す」

「物騒なこと言わないでください!(どっちもあんまり変わんないような…?)」


笑みをすいたかと思えば、アンバーの甘やかな瞳が濃くなる。「前も言ったけど」と告げる彗の柔らかい唇が、お互いを繋ぐ私の指先に触れた。


「俺はふみさんが一番大事です」


それから前髪を掬って。

ぎゅっと瞼を瞑った瞬間、柔らかなキスが額に落ちた。